狐の王国

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非同期型一夫多妻はキモくて金のないおっさんを増加させる

何やら男性の生涯未婚率が上昇してる記事が2つも連続して上がってきてた。

どちらの記事にもあるように、女性の雇用環境が改善して自立しやすくなった結果、離婚が増加して再婚相手に初婚女性を選ぶパターンが多いから、となっている。離婚後の女性は再婚率があまり高くなく、これが真実!シングルマザーの再婚率とは? という記事によると夫再婚妻初婚のカップルは夫初婚妻再婚のカップルに比べ50%ほど多いようだ。

ようは結婚相手として人気のある男性というのはそんなに多くなく、同じ人が複数の女性と婚姻生活を送ることになりやすいということである。

もちろんこれはよいことである。結婚というのはおおむね失敗するものなので、さっさと諦めて別の人と反省を活かしてやり直すというのはとてもよい判断だ。女性に仕事があり離婚後の生活に不安がなくなるのももちろんとてもよいことである。

だが世の中良いことづくめということもそうそうない。

人気のある男性が複数の女性と婚姻することによって、あぶれる男性もまた増える。男性の生涯未婚率が急上昇してるのはそういう理由なのであろう。これがなにを意味するかというと、「キモくて金のないオッサン」の増加である。

孤独というのは人の心を蝕む。そうしたストレスがアルコール依存症などに現れるはず。そう思って推移のデータを探してみたのだが見つけられなかった。だが日本のアルコール依存症患者は増加傾向にあるようだ。

こちらの記事では原因にまで言及されてないが、男性の生涯未婚率が急上昇してることと無関係ではあるまい。日本は女性のアルコール依存症はたいへん低い国だからだ。こうした状況に政府はアルコール飲料価格の上昇や飲み放題禁止などで対応しようとしてるようだが、おそらく効果はないだろう。アルコールが慰めているであろう誰かの孤独のやり場を失わせるだけだ。

そしておそらく犯罪率も上昇することが考えられる。つまり治安悪化である。失うもののない独身男性の増加は、治安の低下を招く。

自由主義国家である日本において、もちろん婚姻するしないの選択の幅が広がることはとてもよいことである。だがそうした自由の拡大の影で、不自由であるがゆえに救われてた人々の幸福について考えなくてよいということはない。

福祉国家として名高いスウェーデンは、その福祉の増強とともに犯罪率もあがってきているようだ。

「社会あるところ、犯罪あり」と言われるように、福祉先進国や生活大国として知られるスウェーデンといえども、未だ犯罪の悩みから解放されてはいない。それどころか、スウェーデンの犯罪は1950年以来増加の一途をたどってきたのである。それ以前の統計を見ると、犯罪は19世紀中葉から減少し続け、第1次及び第2次世界大戦間の時期に最低の水準に達したことがわかるので、第2次大戦後、スウェーデンが高度経済成長に支えられて休息に福祉国家としての条件を整え始めたのと時を同じくして、犯罪情勢は悪化し始めたことになる。さらに、スウェーデンの犯罪は、激増傾向を示してきただけではなく、他国の公式統計と比較すると、国際的にも相当に高い水準にあるといわなければならない。

スウェーデンの犯罪と福祉(PDF)

上のレポートでは犯罪情勢悪化の要因として、離婚再婚を繰り返す環境で育つ子供への悪影響が語られているが、おそらく問題はそれだけではないだろう。

福祉の充足が広げてしまう格差というものが実は存在してるわけなのだ。

そうした格差で底辺に追いやられるのが独身男性である。

かわいいものは、優先的に救済される――それは動物界に限った話ではない。人間が社会的に助けられるかどうかも、この法則が歴然と働いている。もっといえば、この法則をめぐって、いまの世界は動いている。

世間に大きな波紋を呼んだ「電通・新卒女性社員自殺事件」。東京大学を卒業した、若くて有望な(おまけに容姿に優れているらしい)女性社員が、電通に入社して8ヶ月後に過労自殺したものだ。メディアでも大きく取沙汰された。(中略)最終的に、同社幹部が書類送検され、労働時間のルールの見直しにまで波及するなど、社会問題にまで化した。この一件によって人びとが労働問題に関心を持ち、働くことのあり方を問い直すようになった。そのこと自体に否定的な感情はない。たしかにないのだが、どこかしら憂鬱な気分が払拭できなかった。「なぜいままでの事件では、これほどまでに動かなかったのか、その理由はきっと――」と、どうしても考えてしまっていたからだ。

「かわいそうランキング」が世界を支配する | 白饅頭 | note

独身男性は「かわいそうランキング」の最下位であり、その中の最底辺が「キモくて金のないおっさん」である。

一般に男性というのは強者であると考えられている。女性に比して強靭な肉体を持ち、痛みに強く、社会的にも収入が高い。──あくまで統計上は、である。

実際には女性の平均に劣る体力や収入の男性はたくさんいる。それでも男性というだけで「強者」として扱われる。かわいそうランキングの最下位争いをするハメになる。そこに救いの手が差し伸べられることはまずない。

こうした弱い独身男性には、慰みが必要である。アルコールがその手段として不適切なのであれば、もっと健康な手段を提供する必要がある。そもそも彼らも多様であるし、慰みの種類も多様であるべきだ。

おそらくアイドルやポルノも彼らの慰みになっている。地方のコンビニには必ず成人向け雑誌コーナーがある。成人向けといいつつ実際には18歳未満禁止になるレベルの本はおけないことになっている。スマートフォンもインターネットも普及し、ポルノを買うのもたやすいこの時代になぜまだ売られ続けてるのか。ネットに接続するリテラシーすらない独身男性の慰みとして、需要が高いからであろう。

昨今のアイドルブームに、こうした弱い独身男性たちの慰み需要は決して低くないはずだ。今後のVRポルノやアンドロイド技術などには、彼らの慰みとして高い期待が寄せられる。

自由を謳歌できる人は、基本的に強者だ。弱者は自由を与えられても活かすだけの力がないから弱者なのである。そうした弱者を支援する活動は、「かわいそうランキング」の最下位争いをする人々にはなかなか届かない。誰も助けたいと思わないからだ。

彼らに慰みを提供することは、一見とてもアンフェアに見えるだろう。それは誰も「かわいそう」だとは思わないからだ。それでも慰みがなければ、彼らの中から治安を低下させる人物が現れてしまう。

秋葉原で起きた凄惨な事件のことを思い出す。彼に適切な慰みがあったら、こんなことにはならなかったんじゃないか。死なずにすんだ人もいたんじゃないか。まだアルコールに依存しててくれたほうが良かったんじゃないか。アイドルとの握手会の予定でも入れてくれてたら……。

そんなことを考えてしまう。

自由を重んじるリベラリストであればこそ、自由を謳歌できない弱者を、かわいそうランキングではない目で見る必要があるんじゃないのだろうか。

Sugano `Koshian' Yoshihisa(E) <koshian@foxking.org>