狐の王国

人は誰でも心に王国を持っている。

オタクという言葉が指す意味

「オタク」というのは非常に多義的な言葉になっており、言う人や文脈によってまったく違う意味になるのはよく知られているところ。

こういったオタクという言葉が指し示す意味を、ちょっと俺なりに整理してみようかと思う。もっといい分類があれば教えて欲しい。

ディレッタンティズムとしてのオタク

まず基本となるオタクの意味としては、ディレッタントの変形というのがある。ディレッタントというのは趣味として学問をやる学者ではない人のことで、自分の生活や仕事にまったく関係の無い知識をごそごそとため込んでたりする。

基本的にオタクというのはそういう指向を持っている。鉄道員でも無いのにやたら鉄道に詳しいとか、マーケティングやってるわけでもないのにアニメにやたら詳しいとかね。

要するに「プロになりきれない素人」ってこと。素人知識だから実戦的ではないし、役に立ちもしない。そういう人はよく自分の知識には自信があるけど、実際に仕事にしてるプロからみると稚拙だったり過剰だったりする。だからプロから嫌われたりすることもけっこうあるわけね。

たいていプロの側から「これだからオタクは」みたいな否定的な見方で「オタク」という語を使うときはこれが相当する事が多いように見受けられる。

雑学王としてのオタク

これは上のディレッタンティズムとしてのオタクのより高度な状態と捉えればいいのではないだろうか。

あまりにも雑学が過ぎてプロからも尊敬を受けてしまうほど学んでしまったオタクなわけだな。

この場合はオタクというのは尊称にあたる。

また、世間でまだ認められてない分野を発掘し、産業として支えるという役割も持っている。いっときの漫画オタクやゲームオタク、アニメオタクなどもここに該当する事がある。

機械系の雑学人は生活に役立つ(機械の操作や修理など)事も少なくないので、意外と尊敬を集めやすい面はある。それもここの分類に入ることになるだろう。

気持ち悪い趣味人としてのオタク

何やら意味不明の趣味に耽っていてあまり他人と関わり合いを持とうとしない人、という意味でもオタクという言葉が使われることがある。

そういう趣味は世間から認められるような類でもなく、何が楽しいのかもさっぱり他人からはわからない。なのでやたら気持ち悪がられる。

恋愛敗者としてのオタク

これは上記「気持ち悪い人としてのオタク」のバリエーションと捉えてもいいかと思う。
要するに恋愛できない、恋愛の対象として認められない人が、アニメやゲームの美少女、あるいはアイドルなどに夢中になっている、という面のオタク。

実際には普通に彼女がいる人もいれば、本気で趣味に走りすぎて彼女作る暇が無かった人などもいて、この面は往々にして偏見という面が強い。が、本当に恋愛からの逃避としてこういった趣味に走る人も存在するので、完全な偏見というわけではない。

まとめ

以上が俺なりにまとめた「オタク」という言葉の指す意味の分類。実際のオタクの分類ではないことに注意されたい。あくまで言葉の意味としての分類だ。

よく見て頂くとわかるだろうが、これらの分類は互いに矛盾することが少ない。たとえ「雑学王」といえどもそれが理解できない人にとっては「気持ち悪い趣味人」になることもあるし、「恋愛敗者」が「雑学王」であることも珍しくは無いだろう。

要するに本人が供えてる資質と切り取った面から、多様な言い方をされるのが「オタク」という語の不思議なところなのだ。

単に誰かが「オタク」と言ったとき、その言葉の意味が「ディレッタント」なのか「雑学王」なのか「気持ち悪い趣味人」なのか「恋愛敗者」なのか、それはその人がどういう意図を持ってどういう文脈で言ったのかをよく見てみないとわからない。場合によってはこれらの意味が複合してる事すらあるのだ。例えば機動戦士ガンダムの原作者として知られる富野由悠季が言うオタクは、どうも「ディレッタント」と「恋愛敗者」が複合してるように見えることが多い。ここにファッションなどの要素*1まで取りこんで行くとさらに複雑化することだろう。

「オタク」というのは非常に難しい日本語なのである。

*1:いわゆるオタクファッションというのは安価で自身の趣味行動に最適化されてるという面が強く、決して綺麗に見せる事には最適化されてない。が、これらは矛盾するものではないのでうまくやれば両立可能なのではないだろうか。あ、俺? とくに気にせずそのへんのユニクロとかで買ってきた服着てるけど?

Sugano `Koshian' Yoshihisa(E) <koshian@foxking.org>