さて前の記事からの続きを書こう。
なぁ、日本が独自のことをするとガラパゴスと呼んで、アメリカが独自のことをするとグローバルと言うのはやめないか? - VENTURE VIEW
この話の元ネタは、新聞社のウェブ記事が固定リンクを持たない、すぐ削除されてしまうのはグローバルスタンダードに反してるだろ、という話。
これはグローバルスタンダード云々じゃなくて、むしろGoogle最適化の問題だろう。
今のウェブはGoogleが支配してると言ってもいい。ウェブで収益をあげるためには検索から人を集める必要があるし、ウェブ広告市場は特にアメリカではGoogleが強い。
Googleがインターネットで広く受け入れられてる背景には、Google自身がインターネットの理念に乗っ取った運営をしようとしているのが大きい。
正しいHTML、ユーザーに優しいチカチカしない広告、無闇なクリック誘導の排除、こうしたものがある程度普及したのはGoogleのおかげと言ってもいい。まだランキングなんかでクリック誘導してるサイトがあるけどね*1。
そうしたGoogleの「正しい支配」のおかげで比較的クリーンな今のウェブがある。90年代のウェブ広告なんてひどいものだった。絶滅したわけじゃないけど、ポップアップ広告やらなにやらのうざったさといったらもう……。
だからGoogle最適化というのは概ねユーザーにとっても利益がある。今回問題になってるパーマリンク(固定リンク)にしてもそうだし、消えちゃう記事の価値なんて糞みたいなもんだろう。
Googleの圧力はユーザー利益を増大させるからこそ受け入れられて来たんだ。
さてその圧力がいまいち日本では弱い。それは日本であまりGoogleが広まってないからだ。そのへんはGoogleも理解してるようで、各マスコミへの日本法人社長の出演やらGoogle Mapsのニュース番組への提供、様々なイベントの開催を通じて、日本での影響力を強める努力をしているが、今のところはまだまだYahoo!Japanのほうが強い。
だから日本の新聞社のウェブサイトはGoogle最適化をする必要が無い。これは単に利益の問題だ。
じゃあGoogle最適化はグローバルスタンダードに繋がると言えるのか。
これはまだわからない。Google欧米で大成功を納めているし、最近は「曲り角」などと言われてるが、それも米国の不況の煽りを食ってるだけとも言えなくはない。いきなりGoogleが無くなってしまうということも考えにくい。
ただ言えるのは、今のところ本気で「世界」を取ろうとしてるのはGoogleだけということだ。いやもちろんどこも世界中で使われるウェブサービスを開発しようとしてはいるが、そういうレベルじゃない。
Googleが目指してるのは、世界の情報インフラだ。世界中の情報処理に必要なすべてをGoogleが提供しようという目標がある。いわばグローバルなAT&Tを目指しているわけだ。どこかでGoogle日本法人の社長が「Googleの目標はサイト滞在時間をゼロにすることだ」と話していたのを見た覚えがある。これもインフラを目指してるが故の発言だろう。
だからおそらくGoogleはAT&Tのようにどこかの時点で分社化は免れないだろうし、分社化の命令が下るくらいには大きくなるだろう。ただ、AT&Tのときはアメリカ政府がその命令を下したわけだが、国を越えたGoogleにそれを命令できるのはどこなのかという問題は残るかもしれない。
だがGoogleもそれは折込済みだろう。
まちがいなくそこを目指してるはずだし、それを目指す恐らく唯一の企業がGoogleなわけだ。そしてその実現可能性は決して低いものではないと、俺は考えている。
それが実現したとき、いやむしろ実現する過程で、Google最適化は間違いなくグローバルスタンダードになっている。アメリカでの事例はそれが世界でも早期に起きているだけだとも言えるだろう。
これが嫌なら、実現させないだけのライバルプレイヤーを作らなきゃいけない。
さあ、Google並の検索技術と巨大なクラスタ構築技術、クラウドコンピューティングのノウハウの蓄積、様々な魅力的なウェブサービス、収益を可能にするだけの広告営業、それらを実現するための高い能力を持ったエンジニアの雇用。そして何よりも、「世界」を取るという強い意志。この意志無くしてはただのガラパゴスがまた一つ増えるだけだ。
これだけの事を向こう数年内に実現できる企業はどれだけあるか。さらに言えば「アメリカ以外」にどれだけあるか。
そう考えたとき、答えはおのずと出る。