狐の王国

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パソコンの終焉、タブレットの未来

今朝方、秋葉原のPCパーツ屋 『クレバリー』 倒産というニュースが飛びこんで来た。Akiba PC Hotlineでも報じられている。
部品から組み立ててパソコンを作る時代はもう終りだろうとは思ってたが、かといってこれがそれだけを意味するものではないことは、薄々気付いてる人も多いだろう。

ゲームデザイナー山北篤が昔デザインしたSFゲームには、コンピュータは大型のものとラップトップしかなかった。デスクトップパソコンは生き残れないと考えていたようだ。

時代はそれから15年ほどが過ぎ、実際のところいわゆるデスクトップパソコンは Apple のラインナップからも消えてしまっている。iMac がそれに近いが、中身はノートパソコン向けのチップで構成されている。Mac mini はデスクトップというより小型PCであるし、Mac Pro はパソコンとすら呼べない。あれはワークステーションだ。

おそらく本当にデスクトップパソコンは姿を消していくのだろう。

代わりに台頭するのはラップトップかというと、俺はそうは思わない。おそらくは iPad に代表されるタブレット端末である。

しかしデスクトップもラップトップも売れない時代になってしまうと、従来型のパソコンはスケールメリットが出なくなり、価格高騰は避けられないだろう。

さてここで困るのは我々開発者である。別に使うだけなら iPad はよい端末であるし、さほど不満もない。しかし開発するとなるとあまりに画面は小さいし、性能的にも物足りない。こういった不満は開発者だけでなく、デザイン業界や出版業界等々多くのプロユースから出てくることであろう。

そうなると、「中身はラップトップ」の iMac よろしく「中身はタブレット」の大型モニタを備えたコンピュータが出てくるはずだ。Windows 8 のARM版もそれを後押しすることになるかもしれない。

さてクライアントサイドはそれでいいとしても、問題はサーバサイドである。現在のサーバはクラウドと呼ばれる所謂スパコンの類も含めて、ほとんどがデスクトップパソコン(と同じ中身のもの)を大量に連結した構成になっている。これはデスクトップパソコンの市場が大きいため、安く大量導入しやすいことが背景にある*1

パソコン市場が崩れてこうしたパソコン用チップの価格高騰が起きると、今ほど安くスパコンを作ることは難しくなるだろう。パソコンを大量にならべてスパコンを作ってるように、まさかのタブレットを大量にならべてスパコンを作る時代もあながち否定できないかもしれない。そう思って調べてみたら、やはり昨年発表された 64bit ARM はスパコン用途も意識してるようである*2

現状のパソコン(x86)が多くのハイスペックなチップを駆逐して来たように、ARMアーキテクチャスマートフォンタブレット端末を背景にx86を駆逐する未来がもう見えはじめている。もちろん x86 を擁する Intel も指をくわえて見てるだけということもなかろうが、この状況をくつがえすのは難しそうだ。

そして我々にとって重要なのは、過渡期の混乱をどう生き延びるか、である。Lotus 1-2-3Excel に、一太郎が Word にとって代わられたように、パソコンがタブレットにとって代わられたとき、自分たちがそこに対応できなければいつまでたっても古いものを使い続けるハメになる。

変化の激しい時代は、まだまだ終りそうもない。いい時代に生まれたものである。

*1:実際には Xeon が載ってたりするのでホントにデスクトップと同じ中身というわけじゃない。x86 アーキテクチャXeon がこれほど安く大量に買える背景としてパソコン市場がある、という意味

*2:【後藤弘茂のWeekly海外ニュース】 ARM CPUのサーバーへの道を開く新命令セットアーキテクチャ「ARMv8」

Sugano `Koshian' Yoshihisa(E) <koshian@foxking.org>