くだらないゴシップだと思ってたら妙なことになったSMAP事案なのだが、こういう比較的若くて新しいことをやろうとする人たちが高度経済成長期に大儲けした老人たちに潰されるという場面をまた見ることになるのか、という感慨があったので少し吐き出しておく。
飯島マネ今月退職決定!でも恩知らずはメリー副社長のほうだ!SMAPだけでなくジャニーズが今あるのも飯島のおかげ という記事に詳しいのだが、80年代までで一度は滅びたアイドル文化を、バラエティ番組に適合する形で再構築して定着させた SMAP の功績は決して小さくはない。バラエティ適合アイドルの鏑矢になったのは萩本欽一プロデュースの CHA-CHA だったが、その候補者としても後の SMAP メンバーらをふくむ数人のジャニーズメンバーたちが送り込まれていた。
こうして男性アイドルの伝統が21世紀になっても続き、女性アイドルの文化はモーニング娘。による復活を待たねばならなかった。この差はとても大きいだろう。
人気アイドルのSMAP、ジャニーズ事務所に刃向かったらどうなるかを公共の電波を使って解説 : 市況かぶ全力2階建
それをこうして上の世代が潰しにかかるという構図は、以前にも見たことがある。
そう、ライブドア事件だ。
同時期の粉飾決算事件と比べても、極々小規模の違法性*1に過大な罰が与えられたあの事件は、たいへん衝撃的なものだった。
高度経済成長期までに利益を確定し安定の地位を得た世代は、その後の若者がどれだけ頑張ろうとも潰すのであるというメッセージを広く日本社会に伝えた事件であった。
実際、当時のライブドアはよく買収をしており、学生や他企業の作ったウェブサイトを高額で買い取るなど、当時のウェブ関係者にはそれで大きな利益を得たものもいたりするわけである。その買い取り手がなくなって出口がなくなってしまったというのは、その後アメリカのウェブサイト価格の高騰を尻目に日本のサイトがさしたる値段がつかなかったことを考えても非常に大きな損失をもたらしたと言ってもいいだろう。
アメリカのブログサービス Tumblr が11億ドルで Yahoo! に買収されたことは記憶に新しいが、これがいま台湾企業がシャープの買収に提示してる金額(3000億円程度と報道されている)の半分近いということを考えると、いかにアメリカでウェブサイトの価値が高いかはわかるのではないだろうか。
何も製造業がうまくいかなくなってきてるのは日本だけではない。アメリカだって製造業のGDP比率は下がっている。金融やITが伸びてきたから今でも成長し続けてるだけだ。
景気が良いというのはお金が太く流れ続けるということだ。若い世代が自動車や家を買わなくなるのも当然だ。新しい産業が伸びなければ新しい世代にお金が流れていくわけなんてない。子供だって作らなくなり、日本民族は滅びる。
その元凶を作ったのはこうして新しい世代を潰してきた老人たちだろう。
老人たちも戦後の混乱で理不尽な目にあってきた。だが何もなかったからこそチャンスはそこかしこに転がっていた。いつだって何だって足りなかった。そういう時代だからこそ理不尽を受け入れることで利益が取れた。
しかし今はどうだ。人間が生きるために必要なものなんてだいたい供給されてしまっている。そこで新しい産業を興していくというのは、新しい価値を提示していくことに他ならない。そして新しい価値とは何なのか、誰も知らないのである。無いものを作れば利益が得られた時代とはまるっきり状況が違う。
そんな状況で理不尽にさらされた若者たちに未来が見えるはずもない。手探りで価値を見つけ出すことは、片っ端から穴を埋める作業ではないからだ。作っては見たものの誰にも見向きもされないことなんていくらでもある。昨今メディア利用が盛んな Twitter だってそうだ。誰にも見向きもされなかったサービスを作っていた彼らが、気晴らしに作ったのが Twitter だった。その Twitter だっていまだに赤字が続いている。マネタイズに悩んでいるのである。新しい価値は提供できても、利益が取れないことだってあるのだ。
こうした時代の老人の役割とは、若者に対して関門として立ちはだかることではない。彼らが「新しい価値」を見出すための資金を提供することだ。多産多死モデルで新産業を興す新しい世代へ投資していくのである。当たる確率は1%でも当たれば100倍以上になる事業を100個走らせるのだ。何が正しいのかわからないときにはそうするしかない。
こうした投資によって金融産業が盛り上がり、金融が投資対象として振興産業を盛り上げる。かくしてこの20年日本が負け続けてきたような新産業が盛り上がってくるわけである。
日本では投資どころか潰してしまった。なんとかかいくぐって伸びてきた事業はソーシャルゲームくらいだった。
日本は絶望の国だそうだ。若者の自殺率世界一という不名誉な事実がここにある。どんなに苦しい状況でも、1% 以下の確率でも、100回でも1000回でもサイコロを振ることができる希望さえあれば生きていける。しかし今の日本にはそれがない。それがないからこその閉塞感であり、世界一の自殺率なのだろう。
若者にサイコロを振らせろ。新しい世代にしか振れないサイコロがある。その出目次第では、日本という国、アジアという地域、地球という星を変えることすらできる。
急速な少子高齢化も、環境汚染も、エネルギー問題も、紛争も差別も飢饉も、すべて豊かな経済あってこそ解決の手が伸びるのだ。
絶望の国を希望の国に変えるために。サイコロを振るその手に、希望を託すのだ。
*1:しかもどうやら監査法人と相談の上で確認ももらってたようである。