君たちには謝らなければならない。力及ばず申し訳なかったと、言わねばならない。
君たちの世代に、たいへんな苦労を押し付ける結果になってしまったからだ。
1990年代、我が国日本は急速な不景気にさらされていた。電話帳よりも分厚かったアルバイト情報誌がたった1年で平綴じになり、そのうち回復するさと思われていた景気も改善せず、第二次ベビーブームに生まれたいわゆる団塊Jr世代と呼ばれる大量の若者たちが就職氷河期の名のもと、まともに職につけなかった。
「選ばなければ仕事はある」。そう言われて選ばず仕事を探した。ある者はドットコムバブルの予兆に引きずられるように文系で未経験にも関わらずIT業界へ、ある者は派遣会社を渡り歩くような非正規雇用へ、ある者は大学費用は無駄だったと言わんばかりに飲食業界へ、ある者は50社以上もの面接で叩き落され精神を病んだ。
その結果、第三次ベビーブームを起こすはずだった団塊Jr世代は、子供を生むどころか結婚も成立しない世代になった。生まれてくるはずの君たちの同世代は、半減してしまった。
我々は政府に改善を期待した。景気さえ良くなれば、少子化対策さえ行われれば。その期待はすべて裏切られた。世間が騒がしくなるころには、団塊Jr世代はもう子供を作れる年齢ではなくなっていた。
インターネットの発達により、我々は声を上げる場は得た。だがそれが届く速度が遅すぎた。すべては遅すぎたのだ。
本当に申し訳なかったと思ってる。個人としてもできるだけ声をあげ、調べた知識を共有し、一度はネットメディアも立ち上げ、できるだけ声を広げる努力を続けてみたつもりだが、相変わらず世界はクソッタレのままだ。
でも少しは、少しくらいは、マシになったと思ってる。得られる情報量は莫大なものになった。繋がれなかったはずの人と繋がれるようになった。学べないはずの知識やノウハウがそこかしこにあふれるようになった。知ることのなかったはずの知見が、身近に見えるようになった。
君たちの世代の倍はいようかという団塊世代、団塊Jr世代の高齢化に伴う年金や医療費の暴騰は、君たちの支払う税金によって成立する。その負担は我々では支払い切れないほどのものになるだろう。
こんな負の遺産を残してしまったことを、いくら謝罪しても謝罪しきれるものではないこともわかってはいる。
だがこれほどまでに知識のあふれた世界が、我々の眼前にはある。団塊Jr世代の労働期間もまだ20年以上残っている。この20年で、倍の年金・税金を支払ってもありあまる経済成長を遂げてしまえばいいのだ。
楽観的すぎると思うだろうか? だが他に残された道などあるだろうか。姥捨山の伝説のように、団塊世代、団塊Jr世代の半分を殺してしまえばいい。だがそれを実行したあとの日本は、世界から冷たい目線を浴びることになるだろう。国全体に恐怖が撒き散らされるだろう。経済成長など望むべくもない、後退した未来になってしまう。
もはや残された道は経済成長しかないのである。戦後焼け野原を生き延びたある老人は言った。「仕事は探せばあるなんて甘え。仕事なんてないのが当たり前。仕事は作るものですよ」。
絶望することはない。我々にはネットがある。知識がある。昔の人は偉大だったというが、ネットのない信長よりもネットのある我々のほうが圧倒的に有利だ。知識はそれほどまでに大きな力だ。
体を鍛えよう。方法はネットにある。
スキルを身につけよう。チュートリアルがネットにある。
進路を模索しよう。事例も選択肢もネットで調べられる。
未来を予測しよう。新しいことはネットで起きている。
「未来はいつだっていいものだ」。ハインラインの「夏への扉」からの引用である。
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これからの20年はチャンスの20年だ。良くも悪くも日本は負けつつある。負けてるという事は勝ってる相手から学べるということだ。
いつだってどこだって我々は学ぶことができる。過去の亡霊を振り切り、我々の未来を一緒に積み上げていこう。予想はくつがえすためにある。
未来は、いつだっていいものなんだから。