なにやら日本に到着したら、友人たちが口々に件の非実在青少年の話を出して来る。ちょうどホットな話題ということか、はてなブックマーク界隈でもその手の記事が続々あがって来てる。
- Togetter - まとめ「「非実在青少年」問題に関する真夜中の激論」
- 「非実在青少年」問題とは何なのか、そしてどこがどのように問題なのか?まとめ - GIGAZINE
- 【石原知事会見詳報】2次元児童ポルノ「僕の目で判断したい。君(記者)が提供して」 (1/3ページ) - MSN産経ニュース
asahi.com(朝日新聞社):アニメ性描写規制、橋下知事も検討 まず実態調査 - 関西住まいニュース
特にすごいなと思ったのは以下の記事にまとめられてる、規制推進派の言葉の数々。
都議会なんて飾りですか? - agehaメモ
- 漫画家達が凄い数の抗議メールを送ってきたのは、どう考えても暴力だ。
- 子供に対する性暴力漫画を好む人達を放免とするのであれば、彼らは認知障害を起こしているという見方を主流化する必要があるのではないか。
- こういった汚らしい過激な性表現を許すという事自体がおかしい。
- アニメ文化やロリコン文化が性犯罪を絶対に助長している。
- 何で実在しない児童だと許されるのか全く理解出来ない。
- 何で反論している人の事まで考えなきゃいけないのか。
- 説明や調査データを示す必要も無いくらい規制は当たり前の事だ。
これそのままじゃないんだけど、ホントにこう言ってるんだよね……。
で、これで思ったのが彼らが非常にカルト的であるなということ。教祖こそいないまでも自分たちの絶対正義の名において他者の人権を侵害してもよいと考えてるのは本当にカルト的だ。
ちょうど地下鉄サリン事件から15年を経て、再びそのオウム真理教という名前を耳目にする機会が出てきたところだ。
ここにもあるようにオウム事件というのは実に複雑な問題を抱えている。カルトの反対はカルトなのか、「悪の教義に染まった異質な人物たち」として自分たちの世界から切断しようというする連中も多い。
どうも理解できないものが自分たちの世界に存在するのが許せないという人たちが多いようだ。世界はそんな単純ではないのだけども。
逆に理解しやすさが間違った世界認識をもたらすこともある。そういった問題が端的に現れるのはニセ科学とか似非科学とか呼ばれる分野だ。代表的なのがホメオパシーという奴で、以下の記事に詳しくその問題が書かれている。
ホメオパシーは「毒を薄めたら薬になるよ」というわかりやすい論理と、医療への不信感をあおる形で、非常に普及が進んでしまったニセ科学。実際にはプラシーボ効果と見分けがつかない。
そのわかりやすさと「わかりにくい医療」との間をついた実に巧妙な商品であると言えよう。
今回の「非実在青少年」にしても、そこには非常にわかりやすい問題が織り込まれてる。それは「児童を性的対象とするべきではない」というあまりにあたりまえすぎる「正義」だ。
だが確たる証拠もなくアニメや漫画を規制すればいいなどと言ってしまうのは非常にニセ科学的な確信であろう。
こちらの記事ではデータを示し、因果関係はともかくとして性表現規制強化と性犯罪増加は相関してるように見えるということを提示してる。規制強化が性犯罪増加を招く危険性があるということだ。
世界には自分たちに理解できないものがたくさんある。しかしそれは決して自分たちの世界と断絶した別世界ではなく、自分の足元と地続きの同じ世界だ。
根拠の薄い確信というのは誰もが持っている。すべてに根拠を持たせようとしたら、ほんのわずかなことしかできやしない。人間は割と「だいたいあってる」というあたりで満足してるもんだ。
だからこそ、他人に害が及ぶようなものは、それなりの根拠が必要だ。今回の「被害者」はロリータ・コンプレックスを抱えた人たちだけじゃない。へたをすれば規制推進派が守ろうと言ってる子供たちにすら害が及びかねないのだ。
「ポアすれば救われるはず」と「規制すれば救われるはず」の間にどんな違いがあるというのだ? その根拠を問われることを避けてはただのカルトにしかなるまい。
こんなことを言ってるが、正直俺は規制は必要だと考えている。ほとんど削除されてしまったが先日も「小4女子ついったらー登場時のTL」というタイトルでtwitter上に現れた小学生女子に対するあからさまな劣情の発露に対して多くの批難が集まった。
アニメや漫画の影響だとは思わないが、どうも一部のオタク趣味を持つ人間はネタなのかマジなのかはともかく児童への性欲をあからさまにすることに抵抗が無いようである。
それが子を持つ親や子供たち自身にどういう影響を及ぼすかまったく考えてないとしたら、それ自体が既に罪であろう。
こんな年寄りじみたことは言いたくないが、昔のオタクというのは自分たちが誤解されやすい、一般人からは変に見られる事を自覚した上で、自分にも仲間にも厳しいマナーの順守を求めていた。オタクがかたっ苦しいのはそういう理由もあるのだ。
そういったマナーのレベルで制御不可能なところまで来ているとしたら、それは法的な規制がしかれて然るべきだ。
児童への性欲を表明することになんの罪悪感もない人間が増えてるのだとしたら、それは本当に危険な兆候だと言わざるを得ない。そういった嗜好を望まず持ってしまった人間にはご愁傷様としか言いようが無いが、そういった罪悪感を植えつけるために規制するのだと言われたら少なくとも俺は反論しようが無い。
考えてみれば、自分の目に入る範囲での、「ロリコン」「ロリコン的なもの」っていうのは全て、コメディー、ギャグの文脈の上に成立しているものしかなかったんですよね。ですので、ロリコンの人たちや表現に対して、行き過ぎた嫌悪感を感じることもなければ、そういう性嗜好を持った人たちの苦しみとか、自制心っていうのを想像したこともありませんでした。
よく、テレビのバラエティー番組で、同性愛者やアブノーマルな趣味を持つ人を、ギャグやコントのモチーフにしている場面を目にしますが、目線としては正にあんな感じです。
ああいう表現って実は、セクシャル・マイノリティーや特殊な性癖を持つ人を、ネタにすることによって、自身の理解の範疇にまで、なんとか落とし込もうとしているんですよね。
今回、LOを読むまで、ロリコンを勘違いしてました。どうもすいませんでした。 - さよならストレンジャー・ザン・パラダイス
この文章は多くの人の目から鱗を落したであろう。ある人は「あれってギャグだったんだ」と思うであろうし、またある人は「真剣に悩む人がいるんだ」と思うであろう。
俺はネット上で真剣に悩む人も見掛けてたので前者側だった。
心情的には俺も規制反対に回りたいのだが、小児性愛という子供や子供を持つ親には恐怖しか与えない嗜好を、ギャグとして消費し、ネタとして遊んでる人間がいる以上、表現の自由だのなんだのと言う気にはなれない。銃マニアが「街中で本物を乱射したい」「人間を撃ち殺したい」とギャグで言ってるんだといわれてはいそうですかと言えるか?
そしてそういった行動がカルト的な理性の無い反応を産んでるのだとしたら?
俺は同情するよ。自分の愛する子供らに危害をくわえようとする発言を見て、冷静さなんて保てると思うか?