下の名前が同じなので妙に親近感のあるid:hatusenoさんのブクマコメントにちょいとお返事がてら。
もしかして私のあの本の感想文が気に障ったんかなぁとちょっと気になった
http://b.hatena.ne.jp/hatuseno/20081119#bookmark-10893265
あー、速読して感想書いてらっしゃるんでしたっけ? いやそれは全然頭になかったっす^^;
- 作者: 水村美苗
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2008/11/05
- メディア: 単行本
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ただ、あの日本語が亡びるときという本は前にも書いた通りいろんな問題を複雑に抱えてる。単純に「ブンガク復権!」「それはねーよ」で済まされるものではないな、と思う。
それから単純に「ブンガク復権!」と唱えてるわけでもないと思う。
あの本の主張で一番重要なのは、英語を学習する人とそうでない人をわけろ、というところだろう。英語話者を育成するのが重要だというのをはっきりと認めつつ、ただそれは全員じゃなくていいだろ、それはエリートさんに任しておいて日本語をがっつり勉強させようぜ、という主張なんだわな。
まあそれで本の主張通り文学読ませまくったらきっと文学嫌いを大量に産む事になるとは思うんだけどね。そう言いたくなる気持ちも、読んでるとわかる気がするんだけども。
要するにこうだ。これから英語中心の世界がやってくるから、知的生産はほとんど英語になるのはしょうがないよと。
しかし日本語という言語が世界でもそれなりの地位にいる今の現状を悪化させるのはよろしくないだろうと。
*.edu での "japanese literature" の検索結果 約 12,400 件中 1 - 10 件目 (0.04 秒)
*.edu での "chinese literature" の検索結果 約 14,800 件中 1 - 10 件目 (0.16 秒)
日本文学ってのは中国文学に匹敵するほど海外でも研究されてるんだわな。本には「自分が赴任した大学では中国文学科ができたのは日本文学科の後」みたいなこと書いてあったけどね。
この本の主張でもう一つ重要なのが、こういう「日本文学って世界的に見てもスゲーんだぜ!」っていう部分。実際どうなのか他のソースに見当つけられないからわからないけども、事実なら日本人としてちょっと誇りには思うわな。
せっかく海外で評価されてるものを失わせるのはもったいないだろうという主張は、まあ理解できる。浮世絵も滅んだけど漫画が受け継いでそれも再評価されてるんだからそれはそれでいいんじゃね、という気もするけどね。
もうちょっとぶっちゃけて言えば、猫も杓子も英語が重要とか言ってるけど実際に使う人なんて極一部じゃんよ、だったら使わない人には国語教育しまくれよ、っていう話。
それを近代文学を読める人を失わせないため、というのはどうかなと思うけども、国語力向上という意味では賛同できる面もあるんだよね。
たとえば高校の普通科以外ではいっさい英語をやらないで国語をやるとか、大学行く人以外は英語やらなくていいとか、そういうことになるんだと思う。それをいいと思うかどうかだわな。
俺はそこまでしなくてもいいとは思うけど、国語で得られる範囲だけでも情報を取得し、情報を発信する能力、読み書き能力を鍛えるというのには賛成できる。前にも書いたけどmixiとかの日記適当に検索してみると、ホントにこいつら18歳以上かと思うような文章がゴロゴロ出てくる。説明書読まずに店員に聞いちゃうケータイ文化があるのも国語力足りないせいじゃないのかという気がして来る。
ただ、もちろんこれは不平等性をはらんでる。万人に平等な教育という理想を捨てる行為ではあると思う。
そう、この本の多重に詰め込まれてるテーマの一つが、「万人に平等な教育の是非」なんだよ。
今でも私学もあるしすでに平等ではないんだけども、公教育が公式に不平等教育を行えるかどうかだよなあ。外国語を選択科目にしたうえで受験科目では必須にしておくみたいな。きっとカリキュラムに入れなくて泣く子供たちも出るだろうし、そうした「層」を意識させることがいじめなんかにも繋がったりするんだろうな。
子供たちにそういう人生を左右する選択を自分でさせるのがいいかどうか、でもあるのかな。