情報を出した者に情報を集まるとはよく言ったもので、ちょっとニュースにつっこんでみた記事を書いたおかげでこの件に関する情報がトラックバック、はてなブックマーク、referer等々から続々と集まって来た。みなさん本当にありがとうございます。
しかし、フタを開けてみれば予想もしないほど複雑な事件で、ちょっとこれは論点を整理してみないことには何とも言えないなあという風味。ということで、集まった情報のまとめつつ、論点を整理してみようかと思う。
あー、何やら政治的意図を勘ぐる人がいるけど、俺が知りたいことは前に書いた通り。論点を整理するのは自分の興味に関係無い論点を弾くためなのでご理解頂きたい。その整理の結果どっちが有利になるとか不利になるとかは、関東生まれの関東育ちである俺にはまったく関係無い話だしね。
第二京阪道路計画の是非
緑立つ道はどんな道? 第二京阪道路計画(たぶん)公式サイト
まずは建設賛成派の意見が出てるだろうと思しき公式サイト(らしき)ところから。
大阪〜京都間と大阪〜神戸間の幹線道路の交通需要は同程度ですが、大阪〜京都間の車線数が少なく、特に一般国道1号で慢性的な渋滞が発生しています。また、その渋滞を避けるため車が周囲の生活道路などへ流入しています。
第二京阪道路:どんな道?:なぜ必要なの?
一般国道1号を利用して大阪〜京都間を移動する場合、混雑時には約2〜3時間程度かかりますが、第二京阪道路が全線供用すると、移動時間が約1時間に大幅短縮されます。
第二京阪道路:どんな道?:どんな効果があるの?
(中略)
第二京阪道路の地下には、地下河川、幹線下水道、共同溝(電気、電話、ガス、情報ボックス(光ファイバーケーブル)などが収容されます。
(中略)
命をつなぐ救急医療機関の搬送可能箇所が増化。全線共用すると交野市から30分以内に大阪府と京都府の病院に緊急搬送ができます。
(中略)
幅員約64mの第二京阪道路は災害時の火炎の炎症を防ぐ役割があります。また大阪府の高域緊急交通路に定められており、災害時も輸送動脈の役割を果たします。
北巣本保育園の畑問題(道路建設反対派)
次に反対活動をしてるサイトから、道路の是非についての部分を。
4:何の必要性もないどころか、それが出来たら門真市道北巣本町3号線が抜け道利用されてしまうランプ・副道は中止にして
資料5 第二京阪道路(大阪北道路)平面図 に示した副道は今現在までなんら道路・通行もなかったところに計画されており、また寝屋川に阻まれて京都方面にはつながっておらず、誰がどのように利用することが想定されているのか、明らかではありません。
(中略)
ましてや、大阪北道路からの降り口についていえば、本件ランプより大阪寄り230m、京都寄り250mのところにもつくのであり、このランプと副道は百害あって一利なしの過剰工事としか言いようがありません。5:第二京阪道路の必要性
(中略)
そしてようやく西日本高速道路(株)が、平成18年3月に計画交通量を下方修正したことを認めました。
これによると、一日8万200台を4万7200台に下方修正したことになっています。実に41%減、当初計画交通量の59%しかないのです。
(中略)6:第二京阪建設は国道一号線の渋滞解消にはならない
新規に道路をつくって交通容量を増やしても、渋滞解消にはつながりません。国土交通省の交通センサスによれば、平成17年度の平日の混雑時旅行速度は35.3km/hと、平成11年度からはわずか0.3km/h上昇したにすぎません。
(中略)7:杜撰すぎる環境対策
園部一成門真市長に訴える第二京阪道路建設によってこども達の菜園を奪わないで(PDF)
(以下略)
損害額
橋下徹知事は「府はこれまで誠実に交渉してきた。供用開始が遅れると通行料で6億、7億円の損害が出る。申し訳ないが理解していただきたい」とコメント。
野菜刈り取られ…涙ぐむ園児 保育園の畑を大阪府が行政代執行 (1/2ページ) - MSN産経ニュース
いち市民から見た道路計画の心象として、以下の記事が参考になる。
第二京阪道路と大阪府と芋掘りの想い出。 - とれいん工房の汽車旅12ヵ月
この他、前後250m程度の範囲に乗り降り口があることから、保育園イモ畑についてはちょっとした計画変更で対応可能ではなかったのか、などの疑問が出ているようだが、誰か反論可能な人いる?
保育園の対応について
大阪府/報道発表資料 第二京阪道路建設工事に係る行政代執行についてを見ると、事実上の交渉決裂は2007年2月27日の「起業者による収用裁決申請」となるようだ。これを念頭におくと、大筋で次の2通りに意見が別れるのではないかと思う。
- この時点で子供を巻き込まないよう保育園側が畑をあきらめるべきだった(植え付けをするべきではなかった)
- この後の行政の対応が悪すぎた(まだ交渉の余地があった)
この論点は「子供が犠牲になった」という点における犯人探しと言い換えていい。そのため行政側を犯人とするには後述する行政の対応についての問題を同時に考えなくてはならない。保育園側を犯人にしたほうが安易なので流されがちであることに注意しよう。
土地について
この畑およびその周辺一帯は、1550年頃に、松本の先祖である与太郎右衛門が個人の資力を投げうって開墾したものです。これは、門真市史にも記録されている歴史的事実であります。
大阪の突出:巨大道路で保育園畑に強制代執行の危機!この「真昼の暗黒」のテレビ特番・動画をアップ! ヒゲ-戸田
450年以上に渡って代々継承されてきた由緒ある土地で、松本家の歴史の原点とも言うべき場所であり、樹齢数百年のエノキの下にはお地蔵様が祀られていて、古くから地元の人々によって「野神様=農神様(ノガミ様)」として祀られてきた神聖な場所でもあります。
周囲3.2メートルものこのエノキの巨木は、環境省生物多様化センターのデータベース にも「野神様のニレの木」として登録されている貴重なものです。この神聖な御神木を、何の必要性もないランプ・副道のために伐採する、などと言うことは、まさに暴挙、自然に対する冒涜と言う他ありません。
これについては意見が別れるだろう。道路計画の是非もからんで来るように見えるが、そこは切り離して考えた方がいい。自分の言いたいことの補強にしか使えないからだ。
交渉決裂以前の行政の対応
行政の対応に付いての論点は、交渉決裂以前と以後に大きくわけて考える必要があると、俺は考える。
そしてこれに関してはたいした情報は無い。
- 土地収用に対して適切な補償はあったのか
- 代替地候補は探してくれたのか
- 計画変更で対応は可能でなかったのか
といった疑問が行政側に対してあるのみ。
ただこの「適切な補償」に対して、1つ気になる情報があった。
北巣本保育園の畑問題からYouTubeに上がっている北巣本保育園の畑3の5:45あたりから語られている。それによると、
- 農地特例で相続から20年間営農すれば相続税は免除される
- 相続から2008年までで19年経過、免除まであと1年
- 4月10日の名儀変更につき特例が適用されなくなった
- 相続税と利子税あわせて2300万円弱の税金を6月10日までに納めるよう請求された
ということらしい。
この特例が受けられなくなる事による損失分は追加されてたのかどうかというのが気になるのだが、それについては情報が無い。
交渉決裂以後の行政の対応
要するに今回の行政代執行そのものが論点になる。これについては法的な知識が必要になる。
時系列をまず整理してみよう。全部書くと大変なので要点だけ。
- 4月10日 収用裁決下る
- 同日 執行停止申立
- 10月1日 大阪地方裁判所で申立は却下
- 10月2日 大阪高等裁判所へ抗告
- 10月6日 代執行令書交付
- 10月16日 行政代執行実施
- 10月30日 高等裁判所の結論出る(予定だった)
ちなみに代執行の明け渡し期限は9月17日だったことが報道発表資料に書いてある。
ここで疑問が起こるのは必定だろう。
これはいったい何故なのか、というのがこの交渉決裂以後の行政対応における論点になる。
すばらしい記事があるので紹介させていただく。
○○○!知恵袋 橋下知事は鬼畜ですか? - いしけりあそび - Yahoo!ブログ
誤解を恐れず簡単にまとめてみると、
- 行政訴訟は時間がかかる
- その間に今回のような行政代執行をしてしまうと元に戻せなくなる事がある
- 元に戻すとたくさんの人の利益が害されてしまうので裁判でも却下せざるを得なくなる
- 執行停止を申し立てても普通は一審の判決言い渡しまでしか停止しててくれない
- なので控訴と同時に執行停止を再度申し立てる必要があるが、これには1ヶ月弱かかる
さきほどの疑問をもう一度見てみよう。
上については地方裁判所(一審)の判断が間に合ってなくても、執行停止申立中なので行政は手を出せない(ということでいいんだよね?)。これで一つ疑問が解決した。
問題は下。一審が終って即時控訴しても、執行停止申立をやりなおさなくてはならない。それに1ヶ月弱かかるということは、つまりは今回の場合今月下旬くらいには執行停止申立ができたはずだった。
しかしその準備期間を狙って大阪府は行政代執行をやっちまった。
そして執行して道路を作ってしまえば、裁判所も訴えを却下せざるを得なくなる可能性が高いということになる(んだろうと思う。あってる?)。
今回の事件で一番俺の興味を引いたのはここだ。これをどう考えるかが今回の問題における最大の論点になるだろう。
個人的にはこの点に関しては法律のバグかセキュリティホールだと言いたい。即刻パッチをあてるべきだ。そんなバグを利用した大阪府に対しては不信感を持たざるを得ない。
これについて追記
大阪府の代執行についての意見に反論してみる。 - 院生兼務取締役の独り言
ここで反論と本人と思われる人による再反論が繰り広げられている。参考にしたい。
簡単にまとめてみるとこんな感じ?
- 第二京阪道路計画の是非
- 道路必要だよ派
- 道路無駄だよ派
- 保育園の対応について
- 保育園が子供を盾にするなんて許せないよ派
- 行政が強引に畑を奪ったんだよ派
- 土地について
- 土地優先派
- 思い入れのある土地を奪うのは許せない派
- ご神木とお地蔵様を撤去するなんて罰あたりだよ派
- 道路優先派
- 公益のためにはしかたがないよ派
- 道路計画変更で対応すべきだよ派
- 土地優先派
- 交渉決裂以前の行政の対応
- 補償の有無に関わらずどく必要はないよ派
- 補償は適切でどかなかった方が悪いよ派
- 補償が適切じゃなかったんだよ派
- 道路計画変更で対応すべきだったよ派
- 交渉決裂以後の行政の対応
- 準備期間を狙うなんて卑怯だよ派
- 準備期間を狙えるような法律が悪いよ派
- 地裁で却下された時点であきらめろ派
- 7億円の損害のほうが重要だよ派
- 論外
- とにかく橋下嫌いだよ派
俺個人としては道路必要だよ派で保育園が子供を盾にするなんて許せないよ派で道路優先派の公益のためにはしかたがないよ派、補償は適切でどかなかった方が悪いよ派(ここの問題を保育園側があげてないので行政対応に問題無しと推測)、準備期間を狙えるような法律が悪いよ派、ってとこだな。
もっとも、行政対応以外については前にも言った通り俺にはまったく関係無い話なのでどうでもいいといえばどうでもいい。
足りない派閥とか不適切な派閥とかあったら適当にパッチしてちょ。