狐の王国

人は誰でも心に王国を持っている。

職業差別は倫理観を形作る源泉ではないか

まだ悩んでるところがあるので、表題のようなことを断言する自身は無い。が、一面では正しいとは思ってる。

「風俗嬢に説教たれる人々が痛い理由」と「売春を合法化し、厚生労働省売春管理局を作る案」 - 分裂勘違い君劇場
404 Blog Not Found:仮説 - 「売女」や「土方」が蔑まされる理由

90年代頃からだろうか。「職業に貴賎は無い」を合言葉に、今まで蔑まれてきた職業──売春婦やキャバクラ嬢を讃美する声があがってきた。曰く、「体を張ってる仕事」「男に癒しを与える存在」等々。

差別が無くなる事は、いいことだと思ってる。職業や生まれで人は差別されるべきではない。

たとえば、ICカード付きの許可証を持った男性だけが風俗サービスを利用できるようにして、風俗サービスを利用する男性には、定期的に性病検査が義務づけられる。当然、エイズ検査も定期的に受けなければならない。風俗嬢も、同様に許可証で管理される。

厚生労働省売春管理局でも作ればいいのではないかと。

ついでにマリファナも合法化し、大麻管理局の管轄にすればよい。

霞ヶ関のお役人も、自分の役所の権限が拡大するので、喜ぶのではないかな。

「風俗嬢に説教たれる人々が痛い理由」と「売春を合法化し、厚生労働省売春管理局を作る案」 - 分裂勘違い君劇場

すごくいいアイデアだ。性風俗産業の非衛生な面が一気に解決するし、セックスボランティアの問題まで解決できる可能性すらある。なんせ国営産業なら予算だけ割り当てりゃどうにかなる。

例えば「売春学校」を作り、そこの卒業生しか「売春師」になれないようにして、売春者の地位を向上するのは不可能ではなさそうに私には思える。不可能に感じる人は、外科医がかつてどんな扱いを受けていたのかを知らないだけだ。

404 Blog Not Found:仮説 - 「売女」や「土方」が蔑まされる理由

素晴しい。技術面、衛生面ともに訓練された売春師が我々の世界に誕生する。実はこのようなアイデアはすでにフィクションという形で存在している。


都立水商 (小学館文庫)

都立水商 (小学館文庫)

都立水商! 09 (ヤングサンデーコミックス)

都立水商! 09 (ヤングサンデーコミックス)

この「都立水商!」は俺は漫画版でしか読んでいないが、水商売専門の商業高校を設立し、その教師と生徒たちを描く作品。もちろんそこには売春婦育成コースもある。

そうなんだ。こういった水商売や売春を讃美してみれば、様々なアイデアが生まれる。すばらしい、たくさんの問題が一気に解決する。諸手を挙げて賛成したい!

そんな衝動に駆られる。

が、俺はそれに賛成できないのだ。その勇気が、俺には無い。

大きな理由は、子供だ。

で、この手の話になると、こーいうこと言い出すしょーもねえ奴はいる。

「あなたの彼女が風俗嬢でも付き合いますか?」とか「だったら娘を風俗嬢にするんですか?」とか。

前者で言うんだったら、別に女選ぶのに相手の職業とかあんまし気にしてねえんで無問題。気になるといったら、その背景ぐらい。足抜けしたいんだったら問題となってることが解決可能かどうか、こちらがフォローできることは何かというぐらい。後者については、本人の選択だったら俺がどうこう言う問題じゃねえだろ。その選択に至る背景によっては「ちょっと待て」ということになるけど。先々考えると、割が合うかどうかって結構微妙なところがあるからな。

その辺の仕組みが改善されない限りはなあ。

国が売春の管理してるっていったら、タイがそうかな - NC-15

こういう価値観は現代ではかなり一般的になってると思う。少なくとも異を唱える気にはならない。

俺が親なら、娘に水商売や売春で生計を立てては欲しくない。それは上記引用部のように、「割に合わない」のが目に見えている上に、金銭感覚の狂いを修正するのが難しいからだ(儲かるのは若いうちだけでしょ?)。さらに言えば男の欲望と真正面から向き合う仕事だけに、下半身の冷静さを維持するのが難しい。病気の心配もある。それがちゃんとわかっててあえてやるんだというならともかくね。

俺に子供はいないが、自分の子同然にかわいがってる子供たちがいる。養子にくれるというなら喜んでもらうだろう。時には兄になり、時には父になり、いままでも真剣に向き合って来たつもりだ。

だからこんなものを見てしまうと、真剣に戦慄を覚えるのだ。

15〜22歳がなりたい職業に「キャバクラ嬢」。日本終了 - 下載共有日報*1

お水の花道あたりが原因だろうなあ。実際あれ見てキャバ嬢になった女の子も少なくないようだし……。フーゾクの花道とか頼むからやらんでくれよ……。

子供というのは非常に素直なもので、どんなものでもさくさく影響を受ける。それを頭がいいとか悪いとかいう次元で俺は語る気は無い。メディアの影響に強い子供はたいてい親の影響が強いものだ*2

彼ら彼女らに、理を説いても無駄な事が多い。先行きなど考えられる程の知性も経験も、まだ持ち合わせてはいないのだ。目の前の欲望が勝る年頃なのである。

じゃあどうすればいいのか。

そこで俺の中である欲望が鎌首をもたげる。

あの職業は卑しい職業だと子供に教えるのである*3

理性は弱くても差別意識は強いのが子供というものだ。特に思春期の女の子なら自分の事は棚にあげまくってかたっぱしから他人を差別する。いわゆる糞生意気な年頃というやつだ。

そういう差別意識を利用して、目の前の欲望から遠ざける*4。それしかないのではないか。いや、真面目に職業についてる人たちには大変申し訳無いのだが。

こうした差別意識が、「◯◯という職業に身を落す」という表現に繋がる。「身を落す」のは嫌だろ? ちゃんと勉強して健全な職業に付きなさい。

dankogaiの言う「参入障壁が低いと思われてる」のは何も大人たちの間だけじゃない。子供だって大人以上に簡単に考えてる。「すぐ仕事はじめられてお金いっぱいもらえるんでしょ」くらいにしか思ってないよあいつら。

正直言ってしまえば、売春婦や水商売、土方も入れておこうか。その手の職業は「卑しい職業」ということにしておいたほうが都合がいいのだ。

簡単な仕事で大金が稼げるわけが無いのである。稼げたにしても一時的なもの。ずっと続けられる商売じゃない。別の仕事に鞍替えしたにしても、同世代に比べて積み重ねた経験が遥かに違って来る。

そういう目前の欲から子供たちの視線を逸すのに、差別意識は都合が良すぎるのだ。

もちろんそんなものを利用しようなどという事自体、自分自身が「楽な方へ流されてる」のは自覚している。だから実際に行動したことはまだ無い。差別意識があった時代は楽だったなあと思うのみである。「世間の白い目」という参入障壁が有効だった時代がうらやましい*5。バブルが弾けてからこっち、素で生きる事が尊ばれて*6、見栄や伊達が排除されすぎてるんじゃないかと思うくらいだ。

すべての子供たちが理性的であれば問題は無いのだがね。そんな教育が可能な程、我々の文明は発達しているだろうか。

*1:ソースが2chでその2chのソースはYahoo!のニュース。だから削除すると損だよ、って言ってるのに

*2:だから大衆メディアはある程度の規制があったほうが良いと俺は考えるのである

*3:もっとも、俺には実際に水商売で生きて来た姉貴的存在がいるので、彼女に直接その実態を語ってもらう事でわりと平和的に解決するという手段がある。なので無理して差別意識を植え付ける必要は無いのだけどもね

*4:ちなみに思春期に入ってからやっても逆に反発されるだけなので注意

*5:実際にはもらえる給料から働ける期間を計算させて生涯設計を子供なりに作らせるというのを、水商売ではないがやらせた事がある。そんなんでも計算ミスが多くて時間もかかって大変だったけどね

*6:それが自分探し教に繋がってたりするようだが

Sugano `Koshian' Yoshihisa(E) <koshian@foxking.org>