最近、アニメファンの間で「マクロス・フロンティア」という作品が人気である。四半世紀ほど前に作られた「超時空要塞マクロス」と時系列的に繋がっており、そのおよそ50年後を舞台にしている。我々団塊ジュニア世代には、小中学生の頃夢中になった「マクロス」の正統な続編ということもあり、ネットでもよく話題になっている。マクロスを見ていなかった俺でも、主役メカである「バルキリー」のプラモデルを組み立てていたくらいの大ヒット作だった。
その「マクロス・フロンティア」のストーリーは、総人口1000万人規模の宇宙移民船団が未確認の宇宙生物「バジュラ」に襲われ、主人公たちが立ち向かうというSF物語。ただマクロスシリーズの伝統として、「歌」と「男女の三角関係」がキーワードになる。
歌がストーリーの中心的役割を果たすだけに、オープニングやエンディング、劇中歌などはさすがに気合いが入っており、オリコンでも上位に食い込んでいる。特に劇中でトップシンガーという設定のシェリル・ノーム役は、芝居と歌で別の人物を起用し、歌は実力派のMay'nが担当している。
そんな「マクロスF」の主題歌が変更され、「ライオン」という曲になった。劇中、主人公と三角関係を築いていく二人の歌姫、ランカ・リーとシェリル・ノームが、デュオで歌いあげる楽曲だ。
前主題歌「トライアングラー」に比べるとインパクトも耳への残音も少ないこの曲だが、何度か聞いてるうちにサビの「生き残りたい 生き残りたい」という言葉がやけに響くようになってきた。
さらに歌詞を読み込みながら聞いていると、なぜか、涙が溢れてきた。
生き残りたい 生き残りたい まだ生きてたくなる 星座の導きでいま、見つめ合った 生き残りたい 途方にくれて キラリ枯れてゆく 本気の身体 見せ付けるまで 私 眠らないhttp://www.utamap.com/showkasi.php?surl=B30017
我々団塊ジュニア世代は、「戦争を知らない子供たち」から生まれ、「飽食の時代」に育ってきた。そんな我々にとって、「生き残りたい」という言葉はもっとも縁遠いはずだ。縁遠いからこそ、響くのだろうか。
もちろんアニメのストーリー展開にマッチしてるというのもある。移民船団は「バジュラ」によって滅亡の危機に瀕し、人間とバジュラの生存競争といってもいい展開になっている。
だがそれだけでここまで自分の中に響いて来るとも思えない。
ちょっとブログサーチをかけてみると、どうも若い世代のほうがより強く響いてるようにも見える。
マクロスの新OPのライオンから。この部分がすごいいいっ!
Sky Tears 生き残りたい 生き残りたい まだ生きてたくなる
聞いてて危うく泣きそうになる(笑
「ライオン」の歌詞に 生き残りたい まだ生きていたい というフレーズがあるんです。
生き残りたい|LittlePromise ..。o○☆*
最近人の生死に関する報道や、アニメでも人が死ぬていう話が多いからか
凄い胸に来ます。
そういえばそうだ。我々はイラク戦争を間接的にとはいえ経験してしまった。バカな行為もあったとはいえ、イラクで邦人が拉致されたり殺されたりもした。アフガニスタンでも先日、若い日本人が命を落した。チベットの暴動はもはや日本人にとっても他人事ではないことを、一部の若者たちは知ってしまっている。
国内でも地下鉄サリン事件や通り魔事件を通過し、比較的平和になったせいで報道が増えた殺人事件のニュースは日々我々を不安に陥れている。
栄華を極めた日本経済が凋落していく中で生まれ育った世代は、「戦争を知らない子供たち」や「飽食の時代」とはまた違う感性を持っているのだろう。
生き残りたい 埋まらない傷 光 恐れてた 許されたい生命がいま、引かれ合った (中略) 生き残りたい がけっぷちでいい 君を愛してる 目覚めた生命がいま、惹かれ合ったhttp://www.utamap.com/showkasi.php?surl=B30017
この「埋まらない傷」や「がけっぷちでいい」という言葉に、ものすごい重さを感じる。それは本編の激しさを物語るだけでなく、日本の若者がいま抱えるものが表現されてるように感じた。
若い世代の人間と話すことも多いのだが、意外と保守的な人が多い。企業の人件費削減で給料が上がらない中、「これじゃ好きな人を守れない」と結婚に二の足を踏む人もけっこういるようだ。先日話題になった年収が低くて結婚に憂鬱な人の独白も、けっこう共感する人がいたようだ。
今の日本に「安心できる未来」が無いのは、みんなが感じてる事だろう。経済的にも国防的にも不安がくすぶっている。「埋まらない傷」を抱え、「がけっぷちでいい」から「生き残りたい」、せめて愛する人と共にありたい。そう願う若い世代の気持ちが、この楽曲と「マクロスF」にダブって見える。
アニメのストーリーも佳境に入った。せめて作品世界では、ハッピーエンドを迎えて欲しいものだが……。

- アーティスト: 中島愛,May'n
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