狐の王国

人は誰でも心に王国を持っている。

「国産」にこだわることは、くだらなくなんかない

ホンダジェット、他のメディアが書かないことという記事。
ホンダが飛行機を作ろうとしてることは前々から報じられていたが、ようやく販売にこぎつけられたようで本当によかった。だが記事を見てみると、ホンダ製品とはいえ日本人はほとんど関わってないようだ。

もちろん「悪い」ということにはならないが、この点を聞いてみたいと思ったら、意外にも機体関係の開発をした日本人の技術者は1300人のスタッフ中、数名しかいないとのこと。100%ホンダではあるけれど、日本人の関与は薄い。

ホンダジェット、他のメディアが書かないこと(国沢光宏) - 個人 - Yahoo!ニュース

日本は70年前の戦争で負けて以来、航空機技術が途絶えてきている。ジェット機の技術はまるでないわけで、そりゃあ外国のエンジニアがいなくては生産なんてできやしないだろう。ましてやホンダ黎明期のようにいきなりF1に出て車を走らせられるような時代でもない。当時ですらドライバーに死亡者を出してしまっている。

それでも「国産」の技術を持つということは、とても重要な事だ。

けっきょく国内生産してないものは結局高くつくし、生産してれば外国にも売れる。ラオスカンボジアに行ってみると、コンビニやスーパーに国産品がほとんどない。売ってる牛乳すらタイ産だったりする。もちろん輸入品なので、タイで買うよりは高くつくはずだ。そして日本には航空機技術がない。

「牛乳生産技術がない」ことから「航空機生産技術がない」ことまでは一直線につながってる。何が作れて、何が売れて、何を買わなければならないのか。それがその国というものを決めて行ってしまう。

貧しい国なのに物価は高いとかバカじゃないのとか思ったりするけど、国内産業が立ち上がらなければ物資を外国から買うハメになる。そりゃあ物価は上がる。アフリカでは食料生産が難しく、輸入に頼るのでやはり物価が高いと聞く。貧しくて、でも自分たちでは作れなくて、外国から買わなくてはならない。

それは貧乏なのに自炊ができずカップラーメンとコンビニ弁当に頼る生活に似ている。自炊のスキルや道具を揃えるまでは、カップラーメンやコンビニや外食産業に頼らざるをえない。それは高コストだけど、スキルも道具もないのではしょうがないのである。誰かに自炊とはなんなのかというところから教えてもらうしかない。

見たことも聞いたこともない、できあがったものだけ見るしかないのでは、それをどのように作るかなんてわかりはしないのである。

AppleMacBook を中国で生産し、しかしフラッグシップである Mac Pro は米国内で生産していることの意味は、おそらくそういうところにもあるのだろう。国内の生産技術を失わないように、高コストでもペイできる製品は国内で生産する。

タイの物価は日本から見て倍になったように見える。30バーツで食べられた食事が40バーツにあがり、1バーツ2.5円だった為替レートは1バーツ3.6円になった。ほんの1〜2年でレートや物価はそこまで変わる。

「外国産」が安かった時代はもう終わろうとしている。日本で失われた生産技術は、はたして復活するだろうか。貧しいのに外食に頼らざるをえない国に、なろうとしているのだろうか。あるいは外国の工場を使いこなしてペイするだけの設計と販売とマネジメントの力を、身に付けた国になれるだろうか。

Sugano `Koshian' Yoshihisa(E) <koshian@foxking.org>