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狐の王国

人は誰でも心に王国を持っている。

「好きなことで生きていく」ことの現実

「好きなことを仕事にする」「好きなことで生きていく」。そんなことをよく聞くようになってきた。別に悪いことではない。好きなことをして生きていけるならそのほうがいいに決まってる。

だがその先にある現実を語る人はあまりいなさそうなので、気晴らしがてらここに書いておこうかという気になった。

俺は好きなコンピュータいじりをしてたらそのまま仕事の話がいただけるようになったので、よくうらやましがられる。どこからが趣味でどこからが仕事なのか、自分でもわからないことが多い。まずはそのメリットとデメリットから書いていこう。

趣味を仕事にするメリット

お金になるというのがわかりやすいメリットだが、それよりもすばらしいメリットは、趣味のレベルでやっていては出てこない発想の目標が立てられることだ。スケールも趣味では手が出せないレベルのことができるようになる。
例えて言うなら、鉄道模型を趣味にしてたら6畳間を埋めるのも難しいだろうけれども、仕事としてやればその何倍もの大きさのジオラマに鉄道模型を走らせられる、という感じ。
また、自分でできると思うレベルより高いレベルを要求してもらえることもある。それも趣味でやってたらチャレンジできなかったんじゃないかと思う。締め切りがあるのもいい方に働くことが多い。

趣味を仕事にするデメリット

趣味ではなくなること、それが一番のデメリットだ。趣味でやる分の気力は残しておかなければいけないが、それもなかなか難しいことが多い。また仕事にしてしまうと書類やら何やらやりたくなかった周辺の作業というのがどうしても発生する。
また、コンフォートゾーンというか、「楽しい」という範囲を踏み越えないといけないこともある。それは本当につらいことで、あんなに好きだったのに嫌いになってしまったりすることもある。

こうしたメリット・デメリットを踏まえた上で、次は「好き」を仕事にした時に現れる壁を見ていこう。

第一の壁「スキルアップの壁」

「好き」だから夢中になるしスキルも上がる。それは当然のことなんだけれども、「好き」というだけでやってる人と、体系的にきちんと努力して学んだ人とはやっぱり差がある。
また、やはり「好き」でやってる人たちというのはこの世にたくさんいて、そういう人たちの猛烈なレベルアップと競争するハメになる。

彼らと戦えるほど「好き」かどうか、「好き」の本気レベルが試される。好きなことをするために好きじゃないことも精力的にやれるか。好きなことにどこまで本当に夢中になれるか。

第二の壁「好きであることに慣れてしまう」

どんな熱烈に愛し合った夫婦も長年一緒にいるとそれに慣れてしまう。それと同じで、慣れてしまって「好き」だということを忘れてしまうことがある。浮気が始まるのである。
これで不器用で他のことをやってみようとしてもうまくいかなくて、やっぱりあいつじゃないとダメだ、と再確認できればいいのだが、そこそこうまくできてしまうと泥沼にハマることもあるだろう。

第三の壁「老化で情熱が枯れる」

好きなことを仕事にして順風満帆だとしても、そうした情熱はいつか枯れる。人間は老化もすれば病気にもなる。その時、本当に助けてくれるのは「好き」なんて気持ちじゃなくて、日々の習慣である。
習慣として仕事をしていれば、少々調子が悪かったり気力が枯れてたりしてもまあなんとかこなせる。こなせれば生きていけるのである。
ところが「好き」なんて気持ちを原動力にしていると、老化や病気で気力や体力がなくなったときに本当に何もできなくなってしまう。生きていけなくなるのである。

終わりに

「好き」を仕事にするというのは、メリットも大きいが概ねどうでもいいことを仕事にするよりずっとキツいものだというのはお分かりいただけたのではないかと思う。仕事に感情なんか入らないほうがずっと楽なものだ。
それでも「好き」なことで生きていきたいと思うなら、まずは健康に気をつけて、規則正しい生活と体に良い食事を心がけて欲しい。そんなものを気にしなくても「好き」に一直線でいられる人は、そもそもが超人なのである。「好きなことで生きていく」というのは、そんな超人たちと同じ舞台に立つということに等しい。それには、それ相応の覚悟と準備がいるものなのである。

Sugano `Koshian' Yoshihisa(E) <koshian@foxking.org>