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狐の王国

人は誰でも心に王国を持っている。

麻生の憲法発言を捏造したマスコミ

話し言葉も書き言葉も、文の意味は文と文脈によって決まる。この文脈を取っ払い、文だけ取り出して「失言」として報道することを「揚げ足取り」というが、もう「捏造」でいいんじゃないかと思う。

例の麻生副総理のナチス発言についての話なのではあるが、まあ発言の書き起こしと音声を見てみるとねえ。

はっきり言えば麻生発言の主旨はメディア批判である。メディア批判をメディアがつぶしにかかってるようにしか見えないのだが、考え過ぎなのかね?

という話を書いてる人が見つからなかったので、ちょっと書いておかないとかなと*1。以下関連記事。

とりあえず朝日新聞の書き起こしから部分的に引用してみようか。

 しつこく言いますけど、そういった意味で、憲法改正は静かに、みんなでもう一度考えてください。どこが問題なのか。きちっと、書いて、おれたちは(自民党憲法改正草案を)作ったよ。べちゃべちゃ、べちゃべちゃ、いろんな意見を何十時間もかけて、作り上げた。そういった思いが、我々にある。

 そのときに喧々諤々(けんけんがくがく)、やりあった。30人いようと、40人いようと、極めて静かに対応してきた。自民党の部会で怒鳴りあいもなく。『ちょっと待ってください、違うんじゃないですか』と言うと、『そうか』と。偉い人が『ちょっと待て』と。『しかし、君ね』と、偉かったというべきか、元大臣が、30代の若い当選2回ぐらいの若い国会議員に、『そうか、そういう考え方もあるんだな』ということを聞けるところが、自民党のすごいところだなと。何回か参加してそう思いました。

朝日新聞デジタル:麻生副総理の憲法改正めぐる発言の詳細 - 政治

まあ自民党憲法改正案には俺は大反対の立場なのであるが、とにかくかように静かに冷静に議論したんだよ、という主張だというのはここでわかる。

そして話は靖国神社問題へ。

 僕は4月28日、昭和27年、その日から、今日は日本が独立した日だからと、靖国神社に連れて行かれた。それが、初めて靖国神社に参拝した記憶です。それから今日まで、毎年1回、必ず行っていますが、わーわー騒ぎになったのは、いつからですか。

 昔は静かに行っておられました。各総理も行っておられた。いつから騒ぎにした。マスコミですよ。いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから、静かにやろうやと。

朝日新聞デジタル:麻生副総理の憲法改正めぐる発言の詳細 - 政治

協調は引用者。

ここをスルーするわけにはいかない。麻生副総理は、あれほど騒がれた靖国問題は要するに日本のメディアが報道したからだ、と言ってるのである。音声を聞いてみると「マスコミですよ」のところで大拍手が起こっている。同様の考えの聴衆が少なくないのであろう。

さて言われてみれば靖国神社というのは明治期からあるものであり、近年これほど中国韓国が騒ぎ立ててるというのは不思議なものである。いつからだ、という疑問は当然だろう。

ということでちょっと検索してみると、こんな動画が見つかった。

この動画の内容はこうだ。昭和60年、1985年に朝日新聞の記者だった加藤千洋が、中国が日本の愛国心を問題視してる、中曽根総理大臣(当時)の靖国神社参拝を問題視してるという記事を書いた。しかし実際にはそれまで一度も中国からクレームは来ていない。実際には中国は問題視してなかったのを、社会党の訪中団が扇動して中国副首相に靖国神社参拝を批判させた、というものである。

これが事実なら確かに麻生副総理の言うとおりメディアが騒ぎ立てて中国も無視できなくなった、ということになる。問題ではなかったものをマスメディアが国際問題に仕立てあげてしまったという事になる。少なくとも麻生氏は事実として認識してるのでこのような発言が出てくるのだろうね。

思想だイデオロギーだは置いとくとしても、日本の文化というのは死者に対して罪を問わない文化である。戊辰戦争にしたって勝った方も負けた方も「日本という国の礎になってくださった」としてどちらにも感謝の祈りを捧げるのが日本文化だ。太平洋戦争でもそれは同じなのである。

これを「あたりまえのこと」と思う人は感覚が足りてない。これは日本文化なのである。日本文化であるからには他国に向けて「ウチはこうなんで」と理解を求めなくてはならない。

それをせずに靖国神社参拝を問題として取り上げれば、過去日本に領土を取られてた国々は反発するだろうし、その反発も日本文化の感覚からすれば「死者と先祖に祈りを捧げる信仰行為を侮辱された」と取られて反中反韓感情を国内にわきたたせることにもつながる。対立を煽って戦争を起こしたいとしか思えない愚行だろう。

さて麻生副総理の発言は以下のように続く。

いつのときからか、騒ぎになった。騒がれたら、中国も騒がざるをえない。韓国も騒ぎますよ。だから、静かにやろうやと。憲法は、ある日気づいたら、ワイマール憲法が変わって、ナチス憲法に変わっていたんですよ。だれも気づかないで変わった。あの手口学んだらどうかね。

朝日新聞デジタル:麻生副総理の憲法改正めぐる発言の詳細 - 政治

ここも文章の印象と音声の印象はだいぶ違う。ちょっとおどけた口調で「あの手口学んだらどうかね」と言ってるし、同時に聴衆から笑いが起きてる。要するに「ツッコミ待ち」なのであろう。

要約すれば麻生副総理は「マスコミうざいマジうざい。あいつらが騒ぐから進む話も進まないんだよ。ナチスとか誰にも気づかれずにさらっと憲法変えてやんの。俺らもそうしたらラクだよねーとか暗黒面に引きずり込まれそうなレベルでマスコミうざいわー」ということが言いたいようだ*2

補足として靖国神社の話に入るまでの冒頭の話の流れを追って箇条書きにすると以下のような感じだ。

  1. どんないい憲法があってもヒトラーのような政治家を選挙で出してしまうことがある
  2. 憲法は改正すべきだけど、実際の運用はみなさんが選ぶ政治家次第なんですよ
  3. 自民党は冷静に議論して改正案を作ってますよ、年齢差も関係なくやってます
  4. そうやって冷静に考えて、感情的になって決めたりしないでください

この流れでナチスの手口を学ぼうなんて言うわけないよねそりゃ。言うわけないところを言うからジョークだとわかるわけで*3。「ヒトラー政権はよくない政権であるよ」という文脈における発言だからこそジョークになるのである。その文脈を取っ払って報道するのは、もはや捏造とまで言ってしまってもいいのではないか。

ヒトラーのときのようにおかしな政権を出さないためにも、メディアに変に踊らされたり煽られたりしないで冷静にやってほしいということなのだろう。

ま、そりゃあメディアからすれば面白くない話だろうけれどもね。

メディアは今回も「マスコミうざい」という話を「ナチスの手法を真似て憲法改正」にして国際問題に発展しかねない状況を作ってしまったわけだ。こんなことしてるから政治家にもマスコミうざいと思われちゃうんじゃないですかねえ。

「政治に対して批判的である」ことと「政治の足を引っ張る」ことを混同してやしませんか、メディアの皆さん。

そして現自民党政権の親学であるとか天賦人権論反対であるとか表現規制であるとかいう思想的な危うさに危機感を持つ人間の一人として、お願いですから揚げ足取りではなくてまっとうな批判をやっていってくださいと、切に願うのである。

*1:とか書いたとたんに見つけてしまった。こちら詳細なのでぜひお目通しを→ 麻生「ナチスに学べ」発言を、初心者向けに徹底分析してみる。

*2:ちなみに実際はナチス憲法というのはなくナチスがやったのは憲法の形骸化だそうである。参考記事

*3:翌日補足追記。こちらの記事が反語を使った笑いを誘う行為であることを詳細に解説していたのでご一読を→ 「ナチス憲法」を引き合いにした麻生太郎副総理発言について: 極東ブログ

Sugano `Koshian' Yoshihisa(E) <koshian@foxking.org>