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狐の王国

人は誰でも心に王国を持っている。

スパルタ研修がモンスターカスタマーを生む

餃子の王将のスパルタ研修…他の方法はあるのかという記事。スパルタ研修でもしないと働ける人材にならない層がいるんだよ、というお話なのだが……根本的に間違ってませんか?

そもそも物を売るのに求められる能力は、せいぜいお釣りを間違えないことくらいである。数が数えられて電卓が叩ければそれでいい。実際タイのそこらの飲食店やコンビニではそんな程度の仕事しかしない人材が割と多い。注文すら間違えるし呼ぶと舌打ちして不機嫌そうな顔でやってくるし来ないこともある。注文を復唱とかしないんだよねー。それでも長年やってるお店がたくさんある。

接客業? マナー? なにそれおいしいの? そんな世界だってあるのだ。

元記事のさらにリンク先の記事を見るとこんなことが書いてある。

サービス業では時に顧客からの無理な要求をされたり、店舗で突発的なトラブルに遭遇したりする。しかも、少子高齢化で競争は厳しい。スパルタ研修によって、現場での試練を乗り越える力をあらかじめつけさせようと考える企業が増えているのかもしれない。

汗と涙、挫折…「餃子の王将」スパルタ研修ルポ  :日本経済新聞

無理な要求なんて蹴っちゃえばいいし、トラブルがあったら「しょうがないねー」でみんなで諦めればいいんじゃない? バンコクのイタリア料理店にいったら「今日は火が使えなくてねー。ピザ窯は動いてるからピザとサラダなら出せるよ」と言われたことがある。日本だったら店を閉めてるんじゃないかな。もちろん「しょうがないねー」と言ってピザとサラダを食べて帰った。パスタが食べたかったら諦めて他の店に行ったんじゃないかな。

いつもいつも完璧な状態でお客さんを迎えられるわけじゃない。そんなことは消費者だって織り込み済みで利用すべきだし、問題があったら消費者側が店にちゃんと説明すればいい。だいたいのことはそれで解決する。

「社会は厳しい」とか「世の中には理不尽なこともある」とかよく言われるけど、その「厳しさ」や「理不尽」って誰が作ってるの? あんたじゃないの?

理不尽なことに耐えなきゃいけない理由なんてない。客から理不尽なことを言われたら「じゃあ仕事しません」「あなたには売りません」と言えばいい。正しい状態とは「理不尽なことを言う人はどこのお店に行っても相手にしてもらえなくなる」ことである。

その理不尽さに耐えることをお金にする人たちがいる。理不尽な客も受け入れてお金に換える強欲な人たちだ。そういう強欲な経営者がはびこってるから「社会は厳し」くなるし「世の中には理不尽なこともある」ようになっちゃうんじゃないの?

経営者というのは不安な生き物だ。目の前の500円を得られなかったら、明日の10万円が支払えないかもしれない。そういう恐怖にいつも怯えてる人たちだ。だからこそ理不尽な要求を受け入れてでも目の前の500円を取りたくなる気持ちや事情はわからなくもない。

実際この20年の不景気の中、そういう不安に負けてきた経営者たちが多かったのだろうと思う。20年前より日本はより理不尽で、厳しくて、接客サービスの品質がたいへん高い国になった。たかだかコンビニや牛丼屋やラーメン屋なのに、海外の一流ホテルみたいな接客をする国になった。

これを何というか。ダンピングである。日本語では不当廉売という。本来一流ホテルにでもいってたいへんな金額を支払わなければ味わえない品質の接客サービスを、ほとんど無料で提供する企業がたくさん現れたということである*1

そのしわ寄せがどこにいったかと言えば、もちろん労働者だ。安い賃金で、厳しい仕事をするハメになった。これが理不尽な客を受け入れてきた結果である。

賃金も安ければ物価も安くなる。安いものばかり売れるようになるんだからあたりまえだ。デフレの根本原因はこういうところにもあるのではないか?

がんばるのはいい。努力するのもいい。より高みを目指すのもいい。けれど、かわりにしっかりお金をもらわないとダメだ。安売り競争は業界そのものがダメージを受ける。

理不尽に耐え、厳しい仕事をこなすなら、それ相応の給与が支払われなければならないし、商品もそれ相応の価格にならなくてはいけない。

私ははっきりいってこういう研修は嫌ですし、受けたくもありません。そして無くすべきだとも思います。しかしスパルタ研修以外に外食産業に来るしかなかった、いわゆる能力のふるいにかけられた若者をどうやって使える人材にすればいいのでしょうか。スパルタ研修以外に彼らが働ける人材になる研修方法というのは具体的に存在するのでしょうか。

餃子の王将のスパルタ研修…他の方法はあるのか : アゴラ - ライブドアブログ

答え:「ハードルを下げる」

理不尽に耐えなくてはならない → 耐えなくていいです。理不尽な客は蹴っていいです
お客様の目を見て話しましょう → 目をそらしながらでも注文さえ聞ければいいです
主体性をもった労働者になりなさい → 判断は上がやるからあとはサボってていいよ
チャレンジ精神を持って仕事に臨んでほしい → 余計なことはしなくていい
協調性をもって働け → 協調できるシステムを上が考えるから自分のことだけ考えてて
仕事に対して誠実であれ → 不正さえしなきゃいいよ、それは取り締まるから

もちろんその分幹部や管理職の負担は増えるわけだが。それだけの報酬を貰えばいい話じゃないですか?

そして消費者も、今のような高品質なサービスを受けたければもっと金を払えばいいんですよ。

*1:もちろんホントの一流ホテルのサービスの手厚さはコンビニとか比べ物にならないんだけれども。応対だけ見てるとほんとにたいして変わらなくて恐ろしいよね……。

Sugano `Koshian' Yoshihisa(E) <koshian@foxking.org>