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狐の王国

人は誰でも心に王国を持っている。

先進国が世界に売るべきモノは「体験」

「日本の特異性」は世界に売れないという記事。
基本的に同意するのだが、ブックマークコメントにも書いたようにアニメについては別の見解を持っている。正直北米市場でアニメのマーケティングが成功してるとは言いがたいのだが、それにしても元記事にあるように3億ドルも売り上げてるのはすばらしいことだ。日本でのアメリカ映画が800億円(およそ9億ドル)の1/3も売り上げてるのである。

情報ソースであるアニメ産業とビジネスの情報を見ると、キャラクター商品市場のほうが圧倒的に大きく、25億ドル規模にもなるようだ。

そう、アニメは元々単体で利益を出すのではなく、おもちゃと連動して売ってたものなのである。確かガンダム富野由悠季監督だったと思うが、「アニメは30分のおもちゃの宣伝」という言葉を残していた。実際ガンダムの前まではその通りだったろうし、今でもそういうアニメのビジネスモデルは変わってない部分も多い。

さてアメリカ映画がこれだけの商品市場を生み出せるだろうか。もちろん皆無ではないが、継続的にこれだけ売れる市場を作れるだろうか。

そう、アニメは見るだけでは終らない。我々オタクと呼ばれる人種は、見たアニメを語り合い、グッズを買い、そのグッズで遊ぶ。キャラクターに扮するコスプレの市場も決して小さくない。今月10月はタイでもコスプレ雑誌が2誌も創刊される。

さてこのようなアニメの市場を考えたとき、「売ってるもの」とはなんだろうか。

UXという言葉

ここで唐突にiPhoneの話をしよう。User Experience という言葉がある。UXと略されることがあるが、日本語にすると「ユーザー体験」、意訳して「おもてなし」とも呼ばれる。

iPhoneはこのUXがすばらしい、というのはよく言われるところだ。その箱をあけたときからそれは始まっていて、宝石のようにおさまる1枚の美しいプレート。操作に使うボタンは元々2つしかなく、どちらを押しても何も反応しない。少しして上のボタンを押しっぱなしにしてると電源が入ることに気付く。銀色のリンゴのマークは、その影が液晶のひび割れのように見えてちょっとユーザーを不安にさせる。だが起動してしまえばそれがただの模様だったことに気付く。ロックをはずすスライドボタン。かちっという音とともに、いくつものアイコンがすっと現れる。
使いはじめてみるとそのわかりやすさにだんだん気付いて行く。過去の体験を追いかけるようとするとつまづく。画面にあるものに素直に反応していくと、なんとなく使えている。
多様なアプリケーション。それを人に見せるだけでも驚かれる。iPhoneユーザー同士でも、アプリケーションの教え合いは楽しい。写真を入れておくだけで、思い出話に花が咲く。お年寄りにも写真は見やすい。すぐに拡大したり次の写真を見るために、画面をなでることを覚える。

先進国は「体験」を売る

さてアニメとiPhoneの共通点はなんだろうか。
それは人と人との間を繋ぐものであることだ。
もちろん一人でも楽しいだろう。でも人の輪の中に入って来たとたん、それはもっともっと楽しいものになる。
それも含めて、アニメもiPhoneもその商品性は「ユーザーエクスペリエンス」、つまりは買った人の体験そのものにあるのだ。

これは別に目新しいことではない。遊園地にお金を払うのはなぜだ? バーやクラブで飲む酒は、酒屋で買ってきたものとは違うのか?

そう、それらはみな「体験」が商品なのだ。elm200さんが世界で売れてるものとしてあげているもの、「大味」「単純」「頑強」。それらは新興国が作ればいい。先進国は違うものを、そう「体験」を作って売ればいい。

韓国のネットゲームがあれほど売れたのはなぜか。任天堂ファミコンスーパーファミコンを作ったとき、コントローラがかならず2個あったのはなぜか。ゲームは一人で遊ぶものじゃない。みんなで遊ぶから楽しいんだ。

一見一人で遊ぶもののように見えるビデオゲームだって、そのプレイ体験を仲間と共有し始めてからが本当の楽しさだった。今でも友達と20年前のゲームを語り合うことすらある。

では翻って、外国人と語り合えるほどのパワーを持った商品がどれだけあるか考えてみるといい。どこの国から来たとも知れぬ人とセーラームーンをカタコトの英語で語り合い、同じ美奈子好きとわかって10年来の親友のように仲良くセーラースターソングを合唱する。そんな商品がどれだけあるんだ。

アニメの良さはその絵にもある。日本人が見れば日本人に見え、西洋人が見れば西洋人に見える。ドラマに比べて感情移入しやすく、子供時代からずっと見てられる。キャラクター商品はいつでも童心を取り戻させてくれる。

アニメ市場は映画と比べちゃダメなのである。映画はせいぜい関連書籍程度しか売るものが無いが、アニメは他にも売れるものがいっぱいある。そしてマジョリティではないからこその「体験」がそこにある。

世界中でこれだけ踊られるダンスをハリウッドは生み出せるのか?

アニメは国境を越えて語り合える、俺たちの「共通言語」なのだ。そう、つまりそれはもはや「日本の特異性」なんかじゃなく、いわば「オタクの特異性」であり、オタクは世界中にいるのである。

今でこそ小さい市場かもしれないが、日本と同レベルのアニメ市場が各国にできあがるところを想像してみるといい。iPhoneだって1つ1つの国では決して圧倒的に売れてるケータイではない。タイではBlackBerryのほうがメジャーだ。だが世界中のニッチをまとめておさえることができれば、それは本当に大きな市場になる。

アニメは日本が世界に打って出られる期待の産業。俺はそう思うね。

Sugano `Koshian' Yoshihisa(E) <koshian@foxking.org>