「VAIO type P」ではなく「MacBook Air」を買った理由という記事が目に止まった。
俺のことを昔から知ってる人ならわかってると思うけど、俺がいまだに最強モバイルコンピュータと信じて疑わないのは、NECのMobileGearだ。横長の筐体に十指入力可能なキーボード、UNIX(PocketBSD)が動く環境。500gの軽量マシン。しかも単三乾電池2本で動くし、がんがん使ってても1週間は持つ。万一切れてもそこらで電池を買えばいいし、本体充電可能な専用バッテリーもあった。これでネットワーク接続さえもう少しどうにかなれば、本当になんの不満も無いマシンだった。
そのMobile Gearによく似たフォルム、重量、しかも俺の大好きな赤色のボディまで用意されたVAIO type P。
「買うんだろ?」
そんな声が周囲からも聞こえて来る。
しかし、もう時代は変わってしまった。
確かにtype Pは欲しい。物欲を刺激されるし、今すぐ衝動買いしてしまいたくなる魅力が、type Pにはある。
だがもう手遅れなのだ。
昔、俺がモバイルギアを使ってたころは、持ち歩けるコンピュータはどうしても性能が制限されていた。普段使いのコンピュータとしては足りないのはどうしょうもなかった。
だから母艦とも言うべきデスクトップのコンピュータをメインマシンとして使用し、出掛ける時に必要なデータだけ同期をとってモバイルコンピュータを持ち出す。そういうスタイルだった。
けど今は……?
告白すれば、諸事情により俺のメイン環境はすでにMacBookという名のラップトップコンピュータに移っている。仕事の都合で家にいられない事も多かったので、作業環境をほとんどMacBookで作ってしまったのだ。
重さは2kgちょっと。重たくないといえば嘘になるが、持ち歩けないサイズでもない。Core2Duo 2.1GHzの計算力、4GBの広大なメモリを搭載し、HDDは500GBに換装した。
そう、2kgという重ささえ我慢できれば、もはやデスクトップコンピュータと変わらぬ性能を持ち歩けるのである。
しかもMacBookにはリッドクローズドモードという、ふたを閉じたままモニタ、キーボード、マウスを繋いで使用するモードが備わっている。自宅にいるときはシングルモニタのデスクトップPCと変わらない使い勝手が実現できる。
作業途中の画面のままスリープさせ、場所を移動し、ふたを開ければ、家にいたときの画面がそのまま目の前にある。データの同期なんてもう要らないし、入れ忘れたツールなんてのもないのだ。なんせメイン環境と一緒におでかけするんだからね。
EeePCの登場以来盛りあがってるNetBook市場だが、手頃な価格からおもちゃや予備機として買う人も多いだろうと思う。俺も1台欲しいなと思っている。もちろん旧来通りの「同期をとって持ち出すモバイル」としても使えるだろう。
だがtype Pは「同期をとって持ち出すモバイル」としては使えても、おもちゃや予備機として買うには値段が高すぎる。そして俺はもう「同期をとって持ち出すモバイル」には用が無くなってしまったのだ。かといってtype PをMacBookの代わりにメインマシンとして使うには、ストレージも計算力も厳しい。メモリも仮想マシンを利用するのが当たり前の今となっては、2GBでは足りない。
彼氏がデスクトップPCつかってた、別れたいなんて記事もあって思わず吹いてしまった。いやまったく、今の時代、デスクトップはすでに「特殊な用途」になりつつあるのではないだろうか。
そういえば90年代に作られた山北篤のSFゲームでは、計算機はラップトップと大型コンピュータしかなかった。デスクトップは生き残れなかったという設定だった。先見の明のあるお方だなあと思うのである。