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狐の王国

人は誰でも心に王国を持っている。

個人の心持ちと社会のあり方を混同してはいけない

国が派遣や期間工を助ける意味がわからんという記事。

この人は派遣で働いてお金貯めながら夜は情報技術の勉強をして転職に成功したんだとさ。まあそれはすばらしいことだと思うんだけども、それで国の問題を語るのはちょっと筋が違うんだよな。はてなブックマークコメントでもちょっと突っ込まれてるけど。

こういう勘違いはホントによくあることで、じゃあそれができる人がいるから救援策は必要無いよね的な話になぜかしちゃう人がけっこういる。

個人の心の持ち方や生き方としてはすばらしいんだけど、全員にそれができるかとか、全員がそれをやった世界というところまではたぶん想像できてないんじゃないかな……。

前にニセ科学についてちょっと書いたときに、知識は、誰かから一方的に与えられるものではないというトラックバックを頂いた事がある。

繰り返しますが、どれほどたくさんの知識を与えられたとしても、自分が直面した問題をどのように解決するかは、自分にしか決められません。

自分が求めて得た知識ではなく、誰かから一方的に与えられた知識では、自分の問題を解決する役には立たないのです。

知識は、誰かから一方的に与えられるものではない - 理系兼業主婦日記

こういう言説には俺も「個人の心の持ち方」としては賛同する。

けど社会や制度といったものを考えるときにこういう「努力重要」みたいな視点を持ち込むのは筋が違うと思う。

ちょっと前にどっかの政治家が少子化問題に対して、「産む機械の数は決まってるのであとは各自にがんばってもらいたい」というような話をして問題になったことがあった。

ただこれを問題にしたのがバカなマスメディアかバカなフェミニストだったらしく、「女は産む機械だというのか」というような問題視をしてしまったせいで、本質的な問題が隠れてしまった。

この発言の問題は、社会全体の少子化という問題に対して「各自でがんばってくれ」と言ってしまったことだろう。なんで子供を作らないのか、作れないのかというところを真面目に考える気が無いんじゃないのか、あいつら。

そりゃ今でも子供作ってる人はいるよ。1人だけじゃなく2人も3人も、いやもっと産んで育てて頑張ってる人いるよ。じゃあだからってみんながみんなそうやって頑張れるかって話。

これが冒頭で言った「全員にそれができるか」という問題ね。

で、もう一つの「全員がそれをやったらどうなるか」という点も考えとこう。こっちは簡単な話で、「その中で優秀そうな人だけが抜け出せる」、つまり抜け出すハードルが高くなる。元記事書いた匿名の人くらいの努力じゃ抜け出せなくなる。

そりゃそうだろう、上に行けば行くほど人数少なくなるんだから。そこの椅子はそんなに余ってない。椅子を増やすには仕事を増やす必要があるし、仕事を増やすには社会の消費を増やす必要がある。そのためには底辺からすべての人達の給料をあげる必要があり……という感じで元に戻っちゃうわけだな。

俺は貧しい国を助けたり、困ってる人を助ける事には賛成だ。だがそれは純粋にボランティア精神だとか優しさとかだけじゃない。彼らがそれなりのお金を持ち、俺らが作るものを買ってくれる人になってもらいたいという気持ちが少なからずある。そういうお互いが幸せになれる関係を築けたほうが、援助の継続可能性も高くなるしな。

こないだテレビでニューヨークのホームレスたちに食事を配ってる施設を取材してたのを見たが、その資金源はリーマン・ブラザーズなど今回の金融危機で消えてしまった企業や、あおりを食らった企業から出てたんだそうだ。

おかげで食事を求めてやってくる人は増えたというのに、資金は枯渇しそうになってるらしい。

もちろんまずは食事からだが、その先も必要だということだよなとつくづく思った。食事を与えるだけじゃどうにもならない。ホームレスたちが仕事と家を持ち、自分の食事を自分の稼ぎでまかなえるようになるまでやって、はじめて成功と言えるのだろう。

つまり彼らが持つべき仕事を作り出すところまでやらないといけなかったわけだ。そのためには彼らに支払うべき給料をどこからか稼がねばならない。自分の給料の他にだ。仕事を作るというのはそういうことなのだから。

それには彼らの働きによってさらに金が稼げる状態を作らなきゃいけない。そうじゃなきゃ自分が何十人分も何百人分も働かなきゃいけなくなって、そんなのできっこないしできたにしても続くわけがない。

さらには彼らが消費したお金がめぐりめぐって自分のところに戻って来るようにしなければ、どこかでやはり資金が枯渇する事になる。

もちろんリーマンもそこまでやろうとしてたのかもしれないけどね。

俺も今は人様に作って頂いた仕事を分け与えて頂いてる身分なのであんまり大きなことを言えた義理でもないのだが、人を助けるという事を突き詰めるとそういうことになるんだろうなと、最近よく思う。

だから国が派遣労働者たちを助けるのは当然だと俺は思う。彼らが消費活動を行わなければ税収は上がらないのだし、消費するための資金は彼らの働きによって稼いでもらわなければならない。

そのためには継続して仕事がある状態を作らなきゃいけないのだ。

それを念頭において、国としてできることをやってもらいたいと切に願う。彼らが消費しなければ、めぐりめぐって俺の仕事まで無くなってしまうかもしれないのだしね。*1

*1:ニセ科学についても、あんなのに金を払うくらいなら真面目に仕事してる人に金を払えという気持ちもある。だから個人努力じゃなくて社会の問題として考えたいのだよな

Sugano `Koshian' Yoshihisa(E) <koshian@foxking.org>