狐の王国

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iPhoneは始まりに過ぎず、次世代「インターネット」の覇権はまだ見ぬ者たちが争う

iPhoneのAPIが次世代のHTMLでApp Storeが次世代のHTTPだという記事。

はてぶの反応を見ると、ちょっとこの記事は誤解されてると思う。

iPhoneApp Storeがそのまま次世代HTML、次世代HTTPになるわけじゃない。おそらくそのことはessaさんも分かってるはず。

iPhoneが革命的であるというのは、いくつか理由がある(たぶん別のところで書くと思う)のだが、その一つに「常時接続型のモバイルデバイス」というのがある。

実際にiPhoneを使ってみるとわかるのだが、ネットに接続してるかどうかをまったくユーザーが意識しないように作られている。電波状況が悪いと「パケット通信ができません」とか言われるのはご愛嬌としても、それさえ無ければほんとうにオンライン/オフラインの差がわからない。

i-modeにしてもWindowsMobile端末にしても、ネットに接続するときはユーザーにそれがわかるように作られている。そりゃパケット代かかるんだから当然といえば当然。

でもiPhoneは最初から「通信費定額」がセット。パケット代は気にしないで使えるプランと抱き合わせになっている。

思えばキャップ制など段階的な料金体系にならなかった理由はそこにあるだろう。パケット代を気にしていたらiPhoneの魅力はぐっと薄れてしまうのだ。節約しようという心理が働かないように、使っても使わなくても同じ金額にしておく必要があった。

そしてモバイルデバイスにおける「決定版」と言っていいユーザーインターフェイスがある。これはおそらく今後のスタンダードになるだろう。マルチタッチの大きな画面とタップ、ピンチといった操作体系は、パソコンにおけるマウスのクリック、ドラッグのような基礎的な操作法として広まって行く事になる。

そしてそのようなインターフェイスをそなえたデバイスは、iPhone向けアプリが移植しやすいような環境が作られて行く事になるだろう。それがessaさんのいう「iPhone API」となるはずだ。

iPhoneのような形でプッシュ技術もAPIに取りこまれて行くだろう。90年代にNetscapeあたりが夢見てたプッシュ技術だが、これがいよいよ現実のものになろうとしてるわけだ。

iPhoneという奇跡:江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance - CNET Japan

こちらの記事にも興味深い記述がある。

さらにこの先には、ウェブアプリの革新が控えています。App Storeで色々なアプリをダウンロードして試された皆さんも同様のことを思われたかも知れませんが、娯楽モノ以外の多くの実用系アプリは何らかの形でウェブ・サービスと連携しており、そのサービスのクライアントとして動作します。つまり、オフラインモードやローカルデータベースをサポートするHTML 5が現実のものになってくれば、あえて気合いを入れてObjective-Cでネイティブ・コードを書かなくても、Safari上で同じ動作をするクライアントが書けるようになる3-4年後の未来が読めたはずです。

iPhoneという奇跡:江島健太郎 / Kenn's Clairvoyance - CNET Japan

つまり「iPhone API」が現実の物となったとき、HTMLかあるいはHTMLのような言語でUIが記述可能になっている。サーバサイドのAPIRuby on Railsのようなフレームワークで作られて行く。

いま現在我々が GmailLivedoor Reader のようなウェブアプリを使ってるのと、サーバサイド的には変わらないわけだ。

Twitterを使ってる人なら、Twitterクライアントがたくさん作られてるのを知っているだろう。あのアプリのように、サーバ側はいまとあまり変わらず、クライアントが変わる。実際App StoreにはTwitterクライアントがいくつか登録されている。

そう、つまりiPhoneは「エポックメイキング」と言っていいデバイスなのだが、iPhoneが世界を制覇すると決まったわけじゃない。むしろ今のような体制では絶対に無理。

むしろiPhoneというのはウェブの歴史でいえば、はじめて画像などを表示する機能を備えたMosaicなのだ。
これからNetscapeInternet Explorerのような、もっとリッチで多機能な、iPhoneを受け継ぐデバイスが出てくるはず。そこに載っているのはAndroidかもしれないし進化したSynbianかもしれないし、まだ見ぬ未知のOSかもしれなければ、オープン化されたiPhone OSかもしれない。それはまだわからない。

iPhoneは革命だ。だが始まりに過ぎない。

今後雨後の筍のように出てくるであろう「iPhoneを受け継ぐ者たち」が、互いに競いあいながら今の我々には想像も付かない結果を出していくことになる。

Sugano `Koshian' Yoshihisa(E) <koshian@foxking.org>